使用貸借と賃貸借の境界線:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官が税務調査対策すべてお話しします_元国税調査官・税理士_松嶋洋

本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

相続税で判断が問題になる解釈に、「使用貸借」と「賃貸借」があります。
使用貸借はタダで貸すことを意味し、賃貸借は有償で貸すことを意味します。

この区分が重要になるのは、土地を評価する際、その土地が使用貸借で貸されるか賃貸借で貸されるかで評価額が大きく異なるからです。

使用貸借はタダで貸すため、借主の権利が弱いと言われています。
この点を踏まえ、使用貸借で貸している土地は、貸主である地主が自分で自由に使っている土地(自用地)と同じ金額で評価されます。
一方で、賃貸借は借主の権利も認められていることから、借地権に当たる部分を控除した金額で地主の土地を評価することが認められます。

このため、地主の相続においては、賃貸借とされる方が有利となります。
タダで貸すか有償で貸すかですから、区分は簡単に見えますが、実はそれほど単純ではありません。
というのも、地代が著しく低額の場合、実質的にタダで貸しているとして、使用貸借として取り扱うとされているからです。

この著しく低額、というボーダーラインですが、一般的にはその土地の固定資産税などの年間の税額の1~2倍程度以下であることを意味し、3倍以上取れば大丈夫と言われています。しかし、それは必ずしも明確ではありません。

このため、賃貸借にしたいなら固定資産税などの年税額の3倍程度以上の地代とした方がいいと言われています。
とは言え、親が子に土地を貸すような場合には、この程度の金額の地代も取らないこともあるでしょう。
このような場合に押さえておくべきは、地代以外の要件で賃貸借として主張できるような材料を整えておくことです。

過去の事例を見ると、賃貸借に該当するか否かの判定上、当然ながら地代の水準が最重視されていますが、契約書の有無や地代の金額の算定根拠の明確性なども重視されています。

土地の貸付け時に不動産「賃貸」契約書をきちんと締結し、賃貸借に係る事項を定めていれば賃貸借と判断される一つの根拠になることは間違いありません。

加えて、賃貸借で貸すということは基本的には不動産賃貸で儲けることを目的にするはずですから、そうなると地代を決める際も合理的な根拠で決めているはずです。
となると、このような根拠もなく低額で貸すならタダで貸す使用貸借と大きな差はない、といった判断がよく見られます。

その他、当然のことですが、第三者に貸すのと親族などに貸す場合とでは、利益供与などない第三者間の方が賃貸借と見られる可能性は大きいです。
親子のような同族関係にあるからこそタダで貸す訳で、他人に貸すなら基本はお金を取ります。

このため、第三者間で貸す場合には、地代の水準が低すぎる場合は別にして、特に税務署から指摘を受けけないまま税務調査においてはスルーされることも多いと思われます。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元: 使用貸借と賃貸借の境界線- 経営・会計コンサルティング

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