税法には、その条文番号が60条の2や132条の2といった、「〇条の〇」という形で書かれるものがあります。
これらは法律用語で「枝番」と言われます。
通常、条文は単に「~条」という形式で書かれるべきものですので、枝番には何か特別な意味があると考えてしまいます。
よくある誤解として、枝番はその前段となる「~条」と同じような意味がある、というものがあります。
具体的には、132条の2という条文は、132条と同じように解釈するという考え方です。
実際、132条の2という条文が問題になった裁判がありましたが、納税者はこのような主張をしています。
この裁判が行われた当時、132条の2に関する判例がなく、一方で132条については多数の裁判例がありました。
132条の判例と同じように132条の2を解釈すると自己に有利になるため、納税者はこのように主張したのです。
この納税者と同様の見解を持つ租税法学者は数多く存在しますが、正解を申しますと、枝番に重大な意味は全くありません。
法律の条文には目次があり、その目次と条文の内容に従って、どこに条文を配置すべきか決まります。
しかし、税制改正で新しい条文を作ると問題が生じます。
例えば、その条文の内容からして132条と133条の間に置くべきものであった場合、枝番を使わないと新しい条文を133条として、古い133条以下を一条ずつずらす必要が生じます。
そうなると、条文番号を残り全部変えることになり、大きな手間になります。
このような手間を回避するために枝番が使われます。
枝番で132条の2を作れば、改正前の133条以下の条文番号はそのままでいいのでスマートです。
枝番はただそれだけの話ですので、132条の2は132条と同じように解釈する必要はありません。
これは法律を作る際の常識ですが、どういう訳か、多くの租税法学者はこんな単純な話が理解できません。
この背景には、租税法学者が税法を研究していないことがあります。
租税法学者の論文を見ると、判例の解説が圧倒的に多く、法律の内容に関するものはほとんど見ません。
実際、学者は判例の研究で忙しいため、法律の条文を読めないことも多い模様です。条文を読めないのに、法律を作る上での常識など理解している訳がない、ということなのでしょう。
困ったことに、学者には権威がありますので、このような筋違いなことを言っても、裁判所や税務当局もそれを正しいものとして参考にすることが非常に多くあります。
現状、法律の使い方を誤った税務当局の課税処分や、正しい解釈をしていない裁判例は非常に多く存在します。
これらの背景に、学者の税法に関する不知誤解があることは間違いありません。
税務当局はもちろん、裁判所や学者も税法に詳しくない。
これでは誰も救われませんので、実務に携わる我々だけでも、税法をしっかりと研究して使う必要があります。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。