一般的にどの業界においても未経験者の転職は簡単ではありません。
それでは、会計事務所業界ではどうなのでしょうか?
この記事では、未経験者が会計事務所に就職・転職するにはどのようにしたら良いのか、年齢、資格など就職を有利にするための5つのポイントを解説します。
会計事務所の仕事内容や税理士事務所との違いについては、会計事務所とは?仕事内容・税理士事務所との違い・選び方で解説しています。
- 会計事務所業界の採用は、毎年8月の税理士試験後に活発になります。
- 年齢は若いほうが有利とされますが、求人票に年齢の上限・下限を書くことは労働施策総合推進法により原則できません。
- 実務経験がまったくない場合は、アルバイトから始めるという選択肢もあります。
- 経理や金融機関での実務経験は評価されやすい傾向があります。
目次
- 未経験者が会計事務所に就職・転職するための5つのポイント
- 実務経験がない人はアルバイトから始める選択肢もある
- 未経験の求人が増えるのはいつ?税理士試験後の8月が動く理由
- 未経験からの会計事務所就職でよくある質問(FAQ)
会計事務所業界では、一般企業での新卒採用と同じように大卒者や高卒者の新卒採用活動を毎年定期的に行っている事務所はほとんどありません。その代わりに、毎年夏(8月初旬)に行われる税理士試験の後に、若手人材の採用活動が行われ、ここで会計事務所未経験の人達の多くが会計事務所に就職することとなります。
そのため、毎年8月のこの時期が会計事務所業界におけるいわゆる「新卒採用」の時期となるのですが、実際は、始めて会計事務所に就職する「未経験者」だけでなく、実務経験のある「経験者」も転職活動を行いますので、未経験者の人たちにとってこの時期の就職活動は意外と苦戦するケースもあります。
では、未経験者が会計事務所に採用される可能性を少しでも高めるには、どのようなことに気をつけておけば良いのでしょうか?
未経験者が会計事務所に就職・転職するための5つのポイント
1:年齢
未経験者の就職可能性に最も大きく影響するのが年齢です。
年齢は若いほうが有利です。特に他業界や他職種から会計事務所業界に転職する場合は、なるべく若い年齢で活動するようにしましょう。
一般的には20代が有利、30代は中盤になるとかなり不利になってきます。未経験での転職を検討する場合は20代がお勧めです。
未経験者を採用する場合、どの会計事務所においても年齢が若いほうが採用が有利になります。これは、未経験者は「育てる」必要があるため、若い人材が望ましいと考えられるためです。
一般的には若いほうが成長が速いですし、また、教育担当をつける際にも年上の後輩は指導しにくいという理由もあります。(例えば、30歳で3年の実務経験があるスタッフの下につく人材を採用する場合、その人より年上の35歳・未経験の人が入社してくると指導しにくいですよね。)
この「年齢」に関しては、一般的には25歳くらいまでだと未経験でも採用されやすく、歳をとるにつれて徐々に採用されにくくなっていき、30歳を超えると採用されにくく、35歳を超えると非常に採用されにくくなる傾向があります。
そのため、未経験者の人はなるべく早いうちに就職活動に取り組むことがポイントです。
また、年齢が高い場合は、平均年齢が高い会計事務所に応募すると採用の可能性はやや高まります。
なお、こうした年齢による採用のされやすさとは別に、制度上は労働施策総合推進法により、募集・採用の際に年齢の上限・下限を求人票に明示することは原則として禁止されています。長期勤続によるキャリア形成を目的とした若年者などを対象とする例外的な募集・採用制度もありますが、その場合も基本的には35歳未満を想定した運用となっています。(※労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A(厚生労働省))
2:資格
会計事務所では、資格と実務経験の両方でキャリアが評価されます。未経験者の場合は、経験がありませんので、少なくとも資格面では評価されるようにしておきましょう。
最低でも日商簿記2級を取得すること、できれば、税理士試験科目1~2科目を取得しておくことが望ましいと言えます。
税理士試験科目に関しては、一般的には取得しやすい「簿記論」「財務諸表論」を取得して就職活動を行う人が多い傾向にあります。
未経験者の場合、実務経験がないわけですから、資格でアピールする必要があります。一般的には日商簿記2級の取得が最低ラインです。
また、日商簿記2級だけでなく、税理士試験科目を取得しておくことも重要となります。
この税理士試験科目に関しては「何科目くらい取得しておけばいいのだろう?」という疑問があるかと思いますが、まずは2科目程度を取得しておくと評価されます。
取得する科目についてですが、税理士試験の受験生が一般的に最初に取得する簿記論と財務諸表論でOKです。
ただし、税理士試験科目を取得している未経験者のほとんどが簿記論や財務諸表論を取得していますので、差別化するために国税三法(法人税法、所得税法、相続税法)や消費税法を取得しておくという方法もあります。(とは言え、国税三法や消費税法は取得も難しいので、手堅く簿記論と財務諸表論の取得を狙うのが無難ではあります。)
なお、令和5年度(第73回)税理士試験からは、会計学に属する科目である簿記論・財務諸表論について受験資格の制限がなくなり、どなたでも受験できるようになりました。税法に属する科目を受験する場合は、学識・資格・職歴のいずれか一つの要件を満たす必要があります。(※税理士試験受験資格の概要(国税庁))
評価されやすい税理士試験科目の選び方については、転職や就職で評価されやすい税理士試験科目とは?もあわせてご覧ください。
3:経験
会計事務所での実務経験がない未経験者でも、一般企業での経理経験や金融機関(銀行や信用金庫)での経験などがあると評価される傾向があります。
一般企業での経理職の場合は税務申告書の作成経験があるとベターですが、それがなくても月次決算や年次決算など決算経験があると評価されやすくなります。
銀行や信用金庫出身者などの場合は、融資営業などで営業と財務諸表分析の経験があると良いです。
また、資産税・相続税に強い会計事務所の場合は、証券会社や信託銀行での富裕層向け営業の経験が評価されることもあります。
資格と実務経験のどちらがより重視されるのかについては、会計事務所の転職や就職では資格と実務経験のどちらが大事?もあわせてご覧ください。
4:応募方法
未経験者の採用に関する合否は応募方法によっても異なってきます。ハローワークやホームページからの直接応募など採用に費用のかからないルートで応募するほうが有利です。
人材紹介会社(転職エージェント)経由の採用では、採用する会計事務所側に高いコストがかかりますので、未経験者は採用されにくい傾向があります。
求人の具体的な探し方については、会計事務所の求人はどのように探せばよいのか?で解説しています。
5:求人の選び方
未経験者の場合、 どういった会計事務所の求人に応募するかも合否に大きく影響します。
20代など若手の未経験者の場合は、大手会計事務所の夏の定期採用など未経験者を複数名採用する求人に応募するのが有利ですが、年齢が上がるに連れて大手会計事務所では採用されにくくなるため、小規模や中規模の大手以外の会計事務所に応募するほうが採用される可能性が高くなる傾向があります。自分の年齢も意識しながら応募する会計事務所選びをすることが重要です。
実際に大手会計事務所がどのような人材を求めているかは、大手会計事務所が採用したい人材とは?で解説しています。また、求人選びで失敗しないために、ブラック会計事務所を見分ける3つのポイントと注意点もあわせてご確認ください。
実務経験がない人はアルバイトから始める選択肢もある
「未経験者」の定義は様々ですが、アルバイトでの勤務経験があると、「未経験者」と「経験者」の間の評価になる場合があります。もちろん「アルバイトなんて正社員としての経験に比べたら全然ダメだよ」と言う人もいますが、少なくとも「アルバイトすらしていない状態」よりは良い評価になるのは確かです。
例えば、税理士試験の受験生には、1年か2年の間、仕事をせずに試験勉強に専念する人もいますが、この場合、試験に合格していれば「資格」はプラスとなりますが、実務経験は「ゼロ」のままです。つまり、税理士試験科目に合格しても「未経験」であることには変わりありません。
ただ、もしこの期間に週に2日でも良いのでアルバイトで会計事務所で働いていたとしたら、資格だけでなく実務経験もわずかながらプラスになります。
また、アルバイトであれば日商簿記2級程度を取得していれば比較的簡単に採用してもらえる会計事務所も多いので、正社員へのステップとして経験を積むにはオススメの選択肢でもあります。(もちろん、アルバイトを頑張り過ぎることによって、本来受かるはずの試験に受からなければ本末転倒ですので、どれくらいアルバイトをするかのバランスも重要です。)
なお、税理士として登録するためには、租税または会計に関する事務に通算して2年以上従事した実務経験が必要です(※税理士の資格取得(日本税理士会連合会))。この実務経験は正社員に限られるものではありません。パート・アルバイト・派遣労働などで正社員と比べて勤務日数や勤務時間が少ない場合は、登録申請の際に「勤務時間の積上げ計算書」を提出し、勤務時間数によって実務経験期間が足りているかを確認する取り扱いになっています(※税理士の登録申請に必要な書類(日本税理士会連合会))。この計算書には、勤務先の代表者の押印に加え、タイムカードや出勤簿のコピーなど出勤日数を確認できる書類の添付が求められます。アルバイトで働く場合は、勤務日数や勤務時間の記録が残る形で働いておくとよいでしょう。
会計事務所のアルバイトは実際きつい?始める前に知っておきたいこと
「会計事務所のアルバイトはきつい」という声を見かけることがありますが、実際にどのような点が大変なのでしょうか。
会計事務所の繁忙期にあたる確定申告の時期や決算月の前後は、通常期に比べて業務量が増え、覚えることも多くなりがちです。伝票入力や資料整理など地道な作業が中心になる時期もあり、慣れるまでは大変に感じることもあるでしょう。
一方で、アルバイトに任される業務範囲は正社員に比べて限定的であることが多く、わからないことは職員に確認しながら進められる環境が一般的です。まずは繁忙期以外の時期から始めて、事務所の雰囲気や仕事の進め方に慣れていくという方法もあります。
未経験の求人が増えるのはいつ?税理士試験後の8月が動く理由
税理士試験は例年8月上旬に実施され、試験を終えた直後の時期に未経験者の採用が動きやすくなる傾向があります。令和8年度(第76回)税理士試験は、令和8年8月4日(火)~6日(木)の日程で実施されました(※令和8年度(第76回)税理士試験公告(国税庁))。
試験を終えたタイミングで就職・転職活動に区切りをつける受験生が多いことに加え、事務所側もこの時期にあわせて採用計画を立てる傾向があるため、8月前後は求人数・応募者数ともに動きが大きくなります。求人情報はこまめにチェックし、試験直後の応募準備を早めに進めておくと良いでしょう。
未経験からの会計事務所就職でよくある質問(FAQ)
Q1. 会計事務所は何歳まで未経験で就職できますか?
A. 一般的には20代が有利とされ、30代中盤になると採用のハードルが上がる傾向があります。ただし、法律上、求人票に年齢の上限・下限を明記することは原則として認められていません。年齢が上がるほど、資格や前職での経験で補う必要があると考えておくとよいでしょう。
Q2. 資格が何もなくても採用されますか?
A. 資格がなくても応募できる求人はありますが、未経験の場合は実務経験で示せない分、資格が判断材料になります。目安は日商簿記2級で、税理士試験の科目合格があればさらに評価されます。令和5年度(第73回)からは簿記論・財務諸表論に受験資格の制限がなくなり、どなたでも受験できるようになりました。
Q3. 経理の経験は評価されますか?
A. はい。一般企業での経理経験や、銀行・信用金庫など金融機関での経験は評価される傾向があります。仕訳や決算の流れを理解していること、数字を扱う業務に慣れていることが、入所後の立ち上がりの早さにつながるためです。
Q4. 会計事務所のアルバイトはきついですか?
A. 繁忙期は業務量が増えて大変に感じることもありますが、任される業務範囲は限定的なことが多く、未経験からでも始めやすい環境が一般的です。とくに確定申告の時期は忙しくなるため、試験勉強と両立する場合は、あらかじめ勤務日数のバランスを決めておくとよいでしょう。
Q5. アルバイトの経験は税理士登録の実務経験になりますか?
A. 税理士登録には通算2年以上の実務経験が必要ですが、この実務経験は正社員に限られません。パート・アルバイトなどで勤務日数や勤務時間が正社員より少ない場合は、登録申請の際に「勤務時間の積上げ計算書」を提出し、勤務時間数で期間の充足を確認する取り扱いになっています。提出には勤務先の代表者の押印や、タイムカード・出勤簿のコピーの添付が必要です。
Q6. 未経験可の求人が増えるのはいつですか?
A. 毎年8月に実施される税理士試験の直後が、未経験者向け求人が動きやすい時期です。会計事務所には新卒の定期採用を行うところが少なく、試験を終えた受験生の採用がこの時期に集中するためです。ただし同じ時期は経験者も転職活動を行うため、応募の準備は早めに進めておくとよいでしょう。
まとめ
応募書類や面接の準備については、会計事務所の履歴書・職務経歴書:ひな形・サンプルと会計事務所の面接ってどんなの?面接から入社までを解説もあわせてご確認ください。
以上が未経験者が会計事務所に就職・転職するための5つのポイントです。
上記を参考の上、会計事務所への就職活動にチャレンジしてみてください。









