非協力を交渉材料にしてはいけない:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る_税務署の実態と税務対策ノウハウ

先日、帳簿の提示を拒否したとして、 消費税の税額控除(仕入税額控除)を3年間否認され、結果として35億円もの追徴課税がなされた会社の報道がありました。

この報道によると、

  1. 無予告で国税に調査されたことに異議があった
  2. 対応を会計士に任せていた
  3. 会計士から税務調査に応じる必要はないと説明された

こんな状況で、経営者もよくわからないうちに、巨額の課税がなされたようです。

無予告調査など、国税とトラブルに発展する税務調査はかなりあります。

その際注意しておくべきことは、 国税に非があれば抗議することは問題ないが、非協力を交渉材料にしてはいけないということです。

国税から無礼な調査を受けた方から、私は

  1. 国税が謝罪するまでは調査に応じたくない
  2. 録音を認めない限り調査に協力をいたしかねる

といった意見や相談を受けることが多くあります。

確かに、人情や常識としては理解できるものの、 法の建前はもちろん、裁判所もこのような意見を完全に否定するため、それを交渉材料にしても、損するのは皆様なのです。

このため、 調査には協力し、帳簿等は見せる 一方で、抗議すべき不手際が調査官にあれば、上司である統括官などに誠実な対応を約束させる といった落としどころを踏まえて交渉する必要があります。

なお、指定官職と言われる署長や副署長などの幹部職員は、言質を取られることを嫌って絶対に納税者に謝罪しないですし、建前ばかりを重んじる国税組織は、書面による謝罪もしないため、相手の出方をみながら、統括官程度の上司の謝罪で手を打つ必要があります。

このあたり、判例などを参考にすれば当然に理解できる話なのですが、国税との交渉に免疫のない税理士は多くおり、かつそのような税理士に誤った知識を提供して、できないこともできるという国税出身の税務調査のコンサルタントがいます。

その結果として、このようなあり得ない不利益を受けてしまうことが多くあります。

経営者の方々は、謝罪があれば調査を受ける 録音を認めてくれれば調査を受ける という考えを持っていますので、調査に協力しない訳ではないという思いがあることが通例です。

このような考えは誤っていませんので、刑事罰の対象になる調査非協力にはならないですが、帳簿を見せないと、本件のような仕入税額控除の全部否認、納税者に特典を与える青色申告の取消しがなされ、それは違法ではないと判断される裁判が多くあります。

このため、最終的には納税者が折れざるを得ない、という納得しがたい現実を受け入れざるを得ないのです。

税には常識で考え難い部分がたくさんありますが、このような非常識もありますので、注意してください。

なお、冒頭の会社については、 税務調査の途中で本店を千葉から四国に移転するといった、管轄が移転すれば調査をスムーズにやりにくくなるとでも考えたのか、誰が見てもやりすぎと思える事情もあったようです。

税務調査には最低限の協力で問題ありませんが、あからさまな非協力には問題も残りますから、調査官の言質や了解を取りながら、柔軟な対策に心がける必要があります。

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著者

元国税調査官・税理士・松嶋洋


元国税調査官・税理士 松嶋 洋

平成14年東京大学卒業後、国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、企業税制研究所(現日本税制研究所)を経て、平成23年9月に独立。

現在は通常の顧問業務の他、税務調査対策等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈をフル回転させるとともに、当局の経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んで解説した、税制改正解説テキスト「超速」シリーズは毎年数百名の税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。

著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』『社長、その領収書は経費で落とせます!』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という200回を超えるコラムを連載中。

<参考サイト>

<著書>

※このコーナーでは元国税調査官・税理士 松嶋洋が税理士法人東京税経センターのメルマガに掲載したコンテンツを編集・再掲したものをお届けしています。今回は、第二百四回目のメルマガ、テーマは「非協力を交渉材料にしてはいけない」です。
引用元: 非協力を交渉材料にしてはいけない| 税理士法人 東京税経センター

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