早期決着は「協力」ではなく「圧力」で決まる:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る_税務署の実態と税務対策ノウハウ

調査官が納税者の協力を得るための方便ですが、 協力してくれれば調査が早く終わります。
と言うことがあります。

協力してたくさん資料を見せれば、調査官も確認すべき資料をもれなく見ることができる訳で、早く終わってくれるのではないか、という淡い期待を持てます。しかし、残念ながらこんな話はありません。

私が前回立ち会った税務調査では、1月に資料をすべて提供しているにもかかわらず、4月下旬まで何の連絡もありませんでした。

連絡が遅くなったことについて、担当調査官は反面調査などで忙しかったと言っていましたが、私の経験上、調査官が手が回らないほど忙しいという事態は基本的にはないのです。

連絡しない大きな理由は、「決裁を上げるための資料作りなどが面倒くさい」ことにつきます。

事実、ほとんどの調査官は異動直前の締めの時期まで決裁資料を作らず、結果として締めの時期に一斉に決裁書類(決議書)を提出する、という実務が一般的です。

こういうわけで、調査に必要以上に協力しても大きなメリットはありませんから、最低限の協力でいい、と常々私は言っています。

しかし、国税の内情を十分にご存じのはずの、税務署寄りのOB税理士などが 「協力すれば早く終わる」という裏付けの乏しい見解を公表しますので、誤った情報が流布されてしまいます。

OB税理士は基本的に前職を悪く言わないので、現役時代に早く終わらせようとしたことがなくても、税務調査は協力すれば早く終わらせるという建前だけ作って、国税は納税者に対して不当なことをしないと宣伝したいのでしょう。

実際のところ、早く終わらせたいのであれば、担当調査官はもちろん、上司である統括官も含めて、それこそ毎日のように督促するべきです。

以前受けた消費税の還付申告の税務調査に対し、還付金を早く返すべきなのに、悠々と夏休みを取ろうとしていた調査官に、還付金を貰えないと納税者の会社は潰れてしまうと毎日のように督促しましたら、本来早く返ってこないはずの還付金が早めに返ってきました。

もちろん、調査官の仕事を邪魔するようなことはしてはいけませんから、何を確認できれば問題ないのか、その都度確認を取り、必要な資料は早急に送付しました。

ただし、督促しなければ舐められる話ですので、仮にプレッシャーをかけなければ、悠々と夏休みが終わってから処理する、という話になったでしょう。

同じように、全然連絡がなかった先の税務調査においても、担当調査官ではなく上司である統括官に連絡しましたら、なぜか今まで連絡しなかった調査官が大慌てで連絡してきました。

国税組織は所詮サラリーマンの世界ですから、サラリーマンが最も嫌がること、すなわち直属の上司に対してクレームを入れるのが、やはり効果的なのです。なお、督促する際は、期限を切ることを忘れずに。
そうしないと、また先延ばしされます。

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著者

元国税調査官・税理士・松嶋洋


元国税調査官・税理士 松嶋 洋

平成14年東京大学卒業後、国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、企業税制研究所(現日本税制研究所)を経て、平成23年9月に独立。

現在は通常の顧問業務の他、税務調査対策等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈をフル回転させるとともに、当局の経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んで解説した、税制改正解説テキスト「超速」シリーズは毎年数百名の税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。

著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』『社長、その領収書は経費で落とせます!』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という200回を超えるコラムを連載中。

<参考サイト>

<著書>

※このコーナーでは元国税調査官・税理士 松嶋洋が税理士法人東京税経センターのメルマガに掲載したコンテンツを編集・再掲したものをお届けしています。今回は、第二百九回目のメルマガ、テーマは「早期決着は「協力」ではなく「圧力」で決まる」です。
引用元: 早期決着は「協力」ではなく「圧力」で決まる| 税理士法人 東京税経センター

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