親族が大部分を占める会社の社員旅行の取扱い:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官が税務調査対策すべてお話しします_元国税調査官・税理士_松嶋洋

本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

法人が役員や従業員のために支出する、社宅家賃や懇親会費などの福利厚生費については、うまく使うことで役員等の生活費を法人の経費にできますので、効果的な節税が可能になります。

反面、その注意点としてよく言われるのが、「親族が大部分を占める会社」の取扱いです。このような会社は福利厚生費が認められない、と指摘する専門家が多く存在します。

その背景には「福利厚生費は役員や従業員の勤労意欲を高める費用であり、親族など家族経営の会社では勤労意欲を高める必要もないことからそもそも支出する必要はなく、会社の経費とするのは妥当ではない。」といった考えがあります。

実際のところ、国税の通達にはこの考え方に沿う取扱いも設けられています。

それは、会社が契約者かつ生存保険金の受取人で、役員や従業員が被保険者でこれらの者の遺族が死亡保険金の受取人である養老保険の取扱いです。

この養老保険の保険料は、原則として福利厚生費として法人の経費になるとされていますが、その例外として、「親族などの同族関係者が大部分を占める会社」の場合には、福利厚生費にならず、被保険者である役員等の給与になると通達で規定されています。

ところで、これに関連してよく質問を受けるものが社員旅行です。
社員旅行については、全社員を対象とし、かつ不参加者に旅行代金に代わる金銭を渡すものではない、といった一定の要件を満たす場合には、福利厚生費になるとされています。

この社員旅行についても、先の養老保険と同様、「親族が大部分を占めるような会社」では、福利厚生費として認められないのではないか、といった疑問があります。

この点、国税の通達には何も規定はありませんが、税務の専門誌の中には、このような会社における社員旅行は、家族旅行と何ら変わるものではないため、福利厚生費にならないと明記されたものもあります。

実際のところ、国税から福利厚生費にならないと指摘された実例もあります。

養老保険と社員旅行の違いをどう考えるか、なかなか難しいですが、親族が大部分を占める会社の社員旅行を認めないのであれば、それを通達に書けばいいだけです。

加えて、家族旅行と変わらないという理屈が成立するのであれば、家族経営の会社の役員給与についても、お小遣いや生活費のシェアと一緒で認められないことになるはずですが、このような会社の役員給与について問題になった事例は聞いたことがありません。

このため、税務調査において調査官が問題視して修正申告書の提出を要請することはあっても、更正処分等で強制的に課税するのは、根拠が乏しくさすがに難しいのではないか、と個人的には考えます。

実際のところ、先の実例においても、最終的には問題なしで税務調査が終了したようです。
今後、通達などで認められないと明確化された場合は別ですが、税務調査で問題視されるリスクを覚悟して、家族経営の会社も社員旅行を経費として問題ないと考えます。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:親族が大部分を占める会社の社員旅行の取扱い|セブンセンスグループ

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