連続提出の意義:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

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本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

法人税の重要な節税の一つに、過去の赤字(欠損金)を将来の黒字(所得)と相殺できる欠損金の繰越控除があります。

この制度を適用する場合、外してはいけない要件の一つに「連続提出」があります。

連続提出とは将来の所得と相殺するために繰り越す欠損金について、それが発生した年度から実際に相殺する年度まで、各事業年度の申告書を毎期連続して提出することを意味します。

このため、例えば令和1年度で出た欠損金があった場合、その次の令和2年度の申告がないまま、令和3年度の申告をするようなケースは、連続して申告書を出していないので、令和3年度の所得に対し、欠損金の繰越控除が使えないことになります。

この要件ですが、税理士の実務上、期限内に申告ができなかった無申告の法人について、数年分まとめて一度に申告することがありますが、このような場合に往々にして問題になります。

ただし、この連続提出について、よく誤解することの一つに、連続提出と言いながら、順序立てて提出する必要はない、ということがあります。

具体例として、平成30年度に欠損金が発生した後、令和1年度は申告せずに、令和2年度を申告した場合の令和3年度の取扱いについて考えてみます。
令和2年度の申告のタイミングでは、令和1年度の申告をしていませんので、令和2年度の所得に対して、平成30年度の欠損金を使うことはできません。

ここまでは前述した通りですが、仮に令和2年度の申告後、令和3年度の申告前までに令和1年度の申告をすれば、平成30年度から令和2年度まですべての申告をしていますので、令和3年度の所得に対して平成30年度の欠損金を使うことができます。

まとめますと、連続提出とは、欠損金の繰越控除を使おうとする年度の申告までに、欠損金が生じた年度以後の全ての年度の申告があることを意味し、順序だてて申告をする(先の例でいえば、平成30年度、令和元年度、令和2年度の順に申告をする)必要はないとされています。

この点、国税の内規において、誤りが多い事例として注意喚起されています。
困ったことに、過去の裁決事例で、連続提出とは順序だてて申告する必要があると誤解させるような判断が示されており、きちんと裁決や判例を勉強する税理士も誤った理解をしてしまう可能性もあります。

事実、聞いたところによると、最近の事例として、税務署もこの裁決を前提に取扱いを間違えそうになったことがあるようで、注意が必要です。
とりわけ、この取扱いは法人税の欠損金の繰越控除に限った話ではないことにも注意が必要です。

個人が行う、株式の譲渡損の申告や先物取引に係る損失の申告についても、過去の損失を当期の所得と相殺できる繰越控除の制度が設けられています。
この個人の所得税の損失の繰越控除においても、「連続提出」という要件が設けられており、この要件の解釈は法人税の取扱いと同様と考えられますので、正確に理解する必要があります。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:連続提出の意義 – セブンセンスグループ – 経営・会計コンサルティング

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