リモート調査の合法性:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官が税務調査対策すべてお話しします_元国税調査官・税理士_松嶋洋

本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

とある税務雑誌の情報ですが、国税局の調査部が管理している法人の税務調査では、臨場型リモート調査が行われることもあるようです。

これは、コロナ禍で行われた取り組みで、会社に臨場はするものの、対面であれば感染のリスクがあるため対面はせず、調査官が会社の会議室などを借りた上で、実際のやり取りは会社のWEB会議システムを通じて行う、という調査です。

なお、今後は法人の規模を問わず、税務署で管理しているような中小零細企業についても臨場型リモート調査を行う方向性も示されています。

さらに一歩進んで、将来的には完全リモートで税務調査を行うことも考慮されているようです。なお、会社に出向くことなく、国税局や税務署の中で税務調査を行うのが完全リモート調査です。

しかし、臨場型リモート調査にしても、完全リモート調査についても、税務当局は情報漏えいの問題を非常に気にしています。

具体的に申し上げると、現状の臨場型リモート調査の要件として、
「法人が通常業務で使用しているWEB会議システムを利用する」
「法人が管理・支配する場所等で、法人が使用する機器・接続環境を利用」する

といった条件が挙げられています。

システムにしても機器にしても、調査先で使っているものを税務当局が使う訳ですから、万一税務調査の情報が漏えいしたとしても、税務当局の責任ではないといった状況を作ろうとしていると思われます。

実際、上記の要件のほか、臨場型リモート調査については、「税務調査では機密性の高い情報のやり取りが行われることや、システムの脆弱性に起因するリスクがあることを(注:税務調査を受ける)法人が理解」しなければならない、という要件も挙げられています。

こういう訳で、リモート調査については、万一の情報漏えいのリスクを、私たちが負わなければならないのです。ここまでして協力すべきか、検討する必要があります。

ところで、そもそも論なのですが、リモート調査については、国税職員の守秘義務に違反することになり、違法性が高い税務調査と考えられます。

このことは、税務調査の録音を考えていただくと分かります。税務調査を録音することは禁止されていますが、それはレコーダーに記録した税務調査の情報が仮に漏洩すると、国税職員の守秘義務に違反するためと説明されています。

すなわち、税務調査の情報漏えいのリスクを残すまま税務調査をするとなれば、国税職員の守秘義務違反になる訳で、本来リモート調査は容認されるものではないのです。

このようなことを申し上げると、「納税者が、漏えいもあり得ることを承諾すれば、違法ではない」という反論もあるでしょう。

しかし、そうなると、税務調査の録音についても容認せざるを得ない訳で、また新しい問題が発生する可能性があります。

税務当局として、リモート調査を進めるのであれば、この辺りの問題をきちんと解決する必要があり、それを放置したままでは、大変な問題が生じると考えています。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:リモート調査の合法性 – セブンセンスグループ – 経営・会計コンサルティング

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