生計一の解釈の相違:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

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本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

所得税や相続税で問題になる用語の一つに、「生計を一にする」というものがあります。これは、家族など財布が一つである場合を意味します。

一例として、扶養親族があれば所得税で扶養控除が認められますが、その扶養親族の範囲は生計を一にする親族に限られています。

財布が同じであるため養育費等の支出をせざるを得ないため、担税力に欠けることから所得控除が認められるという仕組みになっているのです。

相続税においても「生計を一にする」かどうかが問題になることがあります。特に問題になるのは、小規模宅地の特例の判定です。

小規模宅地の特例とは、被相続人が事業などで使っていた宅地について、一定の要件を満たす場合に認められる評価減ですが、この宅地の範囲に生計を一にする親族が事業などで使っていた宅地も含まれるとされています。

同じ「生計を一にする」用語ですが、税務雑誌で紹介された最近の裁判において、その意味は異なる、というショッキングな判断がなされた事例があります。

ここでは、所得税においては先の通り、同一の財布と言えるかで判断するとされたのですが、相続税においてはそう単純な話ではないと解説されています。

具体的には、生計を一にする親族が事業で使っている宅地に対して、相続税を課税されると担税力の問題があるために小規模宅地の特例が認められているという趣旨を踏まえて解釈するべき、としています。

このような趣旨を踏まえると、その宅地における生計を一にする親族の事業によって稼いだお金で、被相続人も生活ができていたという関係がなければならない、とされたようなのです。

私を含め多くの税理士は、「生計を一にする」ということを財布が一緒と捉えていますので、財布が一緒であっても小規模宅地の特例が認められない場合があるとなると、大変です。

小規模宅地の特例の適用を誤ると、数千万単位の税額に影響することもある訳で、場合によっては税理士も訴えられる話になります。

ところで、税法の解釈においては、「借用概念論」と言われる考え方があります。これは、民法などの用語の意味と、税法の用語の意味は全く一致しているため、民法などにある用語の意味そのままで税法を解釈すべき、という考えです。

この点、多くの学者が解説していますが、相続税と所得税で同じ用語でも意味が違うなら、この「借用概念論」は正しい解釈方法ではないと思われます。

税法を勉強するために、租税法学者の論文を読まれる方もいらっしゃいますが、学者の意見は個人的な意見に過ぎず、その実何ら拘束力はありません。

それよりも、上記にもあります通り趣旨を踏まえてじっくりと法律を読むことが重要と考えます。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:生計一の解釈の相違 – セブンセンスグループ – 経営・会計コンサルティング

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