節税スキームは国税の動きを 考えなければならない:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官が税務調査対策すべてお話しします_元国税調査官・税理士_松嶋洋

本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

「こういう風にすれば法律上の問題はクリアできますので、税務調査で否認されることはないと思いますがどうでしょうか。」

このような質問を私はよく受けますが、その際思うことは、
「国税は税金をとれるようにしか物事を考えないため、国税がどう動くかをまず考える必要がある」
ということです。

国税経験のない大多数の方には意味が分からないかも知れませんが、法律上の問題をクリアしても、何とか税金を取ろうと考えるのが国税という組織です。

このため、節税をやる場合には、それに対して税務署の立場に立ってどうすれば税金を取れるのか、それをきちんと考えた上で、事前に対策をしなければなりません。

先日の裁決事例で、夫婦間の資金の移転に対し、税務署が「贈与」と判断して贈与税を追徴したものの、審判所で取り消された事例があります。

この事例では、夫のお金で生活していた、パートの妻名義の預金が、夫の相続税の税務調査で問題になりました。

パートですから、当然ながら妻はその預金を開設するためのお金(原資)はありません。

加えて、その妻名義の預金で、夫は株を購入するなどしていたようです。

となると、預金の原資もその預金の管理も夫ということで、相続税の常識としては、純然たる夫の名義預金となるはずです。

実際のところ、税理士も夫の名義預金と考えたからか、夫の相続税の申告の後、この預金は夫の名義預金であるという理由で相続税の修正申告をしたようです。

しかし、ここで問題になったのは、配偶者の税額軽減という制度です。

配偶者の税額軽減は、1億6千万と、相続財産に対する配偶者の法定相続分のいずれか大きい金額までであれば、配偶者に対して相続税がかからないという大きな軽減措置を言います。

本件で妻はその制度を使うことで、先の名義預金を夫の財産として申告したとしても、追徴税額はゼロ円と計算された模様です。

判例などで確立した、名義預金の判断基準によれば、預金の原資が夫で、管理なども基本夫が行っていますから、名義財産に当たり、夫の相続財産と判断すべきです。

しかしながら、そうなると配偶者の税額軽減で相続税は取れませんので、税務署は税金取るためだけに、配偶者に生前夫がお金を贈与したとして、贈与税を課税したのです。

建前としては、夫の名義預金としか判断できないのにもかかわらず、です。

幸いなことに、裁決で国税当局の処分は取り消されましたが、国税は税金取れるようにしか事実関係を判断しないことが分かります。

このため、税務調査リスクをガードする契約書などを作ってもそれだけでは意味はありません。

あくまでも、自分が税務署だったらどのような話を作れば税金を取れるかを考えた上で、それに対する対策をあらかじめ考えておかなければならないのです。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:節税スキームは国税の動きを 考えなければならない – セブンセンスグループ – 経営・会計コンサルティング

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