法律では「紙保存が認められる」とはされていないから:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官が税務調査対策すべてお話しします_元国税調査官・税理士_松嶋洋

本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

前回も申しましたが、令和6年1月から電子取引のデータ保存が義務化されているものの、実質的にプリントアウトした紙保存が認められることとなっています。
しかし、正確なところは、

  1. 相当の理由がある場合
  2. 電子取引のデータをプリントアウトする
  3. 2のプリントアウトした資料を一定の方法で保存する
  4. データについて税務署がダウンロードすることを認める

これらすべての要件を満たせば、電子取引のデータについて、検索要件などの要件は必要なく、電子保存ができるとされています。

一見して何を言っているのかよくわからない記述になっていますが、法令にはこのように規定されています。
あくまでも、電子取引のデータは検索要件などの一定の要件で保存する義務があるのであり、所定の要件をクリアすればその保存要件を緩和するとされているのです。
このクリアすべき要件の一つとして、紙保存が挙げられているにすぎません。
このため、完全な紙保存が認められるのではなく、電子取引のデータ保存は今後義務付けられます。

このため、メールで添付された請求書について、プリントアウトして保存したとしても、そのメールと添付ファイルを削除することはできません。
仮に削除すると、保存すべき電子取引のデータを保存していない訳ですから、紙保存をしていたとしても、適正な資料の保存をしていないとして、青色申告の取消対象になると考えられます。
それに止まらず、保存義務がある電子取引のデータについて改ざんなどがあれば、重加算税が上乗せされるという取扱いの対象にもなり得ます。

加えて、電子取引のデータのダウンロードにも応じなければなりませんので、会社のパソコンなども従来以上に税務調査でチェックされることになります。
このため、実質的に紙保存が認められるとしても、以前に比して、税務上のリスクがはるかに大きくなっていると考えられます。

令和3年度改正において、突如として義務化するといった法律ができる前は、紙保存をしていれば電子取引のデータ保存の義務はない、とされていました。
このため、電子取引のデータ保存に代えて紙保存も認める、という改正をしたいのであれば、令和3年度改正前の条文に戻せばいいだけです。

しかし、前回も申しました通り、財務省のメンツがあるため、紙保存をすれば電子保存の要件を甘くする、といった周りくどい内容にして、こっそり不利益を納税者に押し付けているのです。
いずれにしても、プリントアウトして保存すれば問題なし、とはなっていませんので注意が必要です。

結果として、税務調査前は紙の資料はもちろん、ダウンロードが求められるため、電子保存しているデータの内容のチェックもしっかりと行う必要があります。
それにとどまらず、電子データを保存しているパソコンをチェックされる場合、そのパソコンにあるその他のデータについてもチェックされる可能性が大きいのです。
このため、今後は税務調査前にパソコンを徹底的に確認することが必須の対応になると思われます。

追伸、
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:法律では「紙保存が認められる」とはされていないから– セブンセンスグループ – 経営・会計コンサルティング

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