税理士賠償責任と損害賠償の予約:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官が税務調査対策すべてお話しします_元国税調査官・税理士_松嶋洋

本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

税理士の実務で最も怖いことは、税理士業務は原則として無限責任であるということです。

株式会社でサービスを提供する場合、ミスをして顧客に迷惑をかけても、会社に出資した金額以上に責任を負うことはありません(有限責任)。

しかし、税理士はそうではありませんから、原則として自分のミスについて、顧客に対しては無限に損害賠償責任を負うことになります。

近年は税理士に対する損害賠償訴訟も増えており、税理士業務のリスクは膨大になっています。

このため、その責任をガードするために契約書が重要と言われます。

契約書が重要になるのは、税理士の責任の範囲を明確にすることができるからです。

しかし、税理士の契約書においては、損害賠償の予約を定めることができるのか、これが問題になります。

損害賠償の予約とは、予め顧客との間で損害を与えた場合の賠償額を決めておくことをいいます。

仮にこれが認められれば、無制限に損害賠償金を支払うことはなくなります。

とは言え、税理士の責任はそもそも無限、という建前があることから、損害賠償の予約が本当に認められるのか、弁護士によっても見解が分かれています。

この点、税理士にも損害賠償の予約が認められるという判断がなされた福岡地裁の判決があります。

ここでは、

①税理士に故意又は重大な過失がなく、かつ、

②通常あり得る程度の税制選択上又は会計処理上の過誤に対しては、損害賠償の予約が認められるとされています。

①は当然で、意図的に損害を与えた場合や、専門家として最低限要請されるような注意を払っていなかったために顧客に損害が発生した場合には、当然に税理士は責任を負うべきです。

このため、このような場合に責任を限定することはできないと言えます。

次の②ですが、税理士も人間である以上、通常生じても仕方がないミスであれば、損害賠償の予約で責任を限定することも許される場合もある、ということでしょう。

経済取引が複雑になる昨今、税理士業務のリスクは膨大になっています。

先の判例の通り、税理士の契約上、損害賠償の予約が認められる場合があれば、税理士にとっては心強い話です。

もちろん、税理士は最低限、故意や重大な過失がないことは示す必要があるため、日々の業務の記録が重要になります。

この事例においても、税理士の判断に至った経緯やその根拠などにより、故意や重大な過失がないことが説明できた部分について、契約書に定めた損害賠償の予約によって賠償額が制限されるという判断がなされています。

その他、消費者の利益を守る消費者契約法においては、消費者との契約については一定の損害賠償の予約が適用されないとされています。

このため、法人税申告などは別にして、消費者が顧客となる相続税申告などについては、そもそも損害賠償の予約で税理士が救済される余地がないとされる可能性もあると言われますので、注意が必要です。

追伸、

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:税理士賠償責任と損害賠償の予約– 経営・会計コンサルティング

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