
オーナー企業の相続税対策において、自社株の評価を下げることは必要不可欠ですが、評価を下げるために行う手法の一つに、事業年度変更があります。
自社株の評価上、類似業種比準価額方式で計算することがあります。
この方法は、
①会社の配当
②会社の利益
③会社
の純資産という3つの要素を基に、評価する会社の株価を算定します。
この方法で問題になるのは、①~③の要素の全部または一部がない評価会社が存在することです。
例えば、
・利益が出ていても株主に配当しない (①の要素がない)
・赤字で利益が出ていない (②の要素がない)
・会社が債務超過 (③の要素がない)
このような場合です。
詳細は割愛しますが、3つの要素のいずれかがない場合、評価方法が変更され、評価額が上がってしまうことが通例です。
とりわけ、利益が大きい非上場会社は、配当に対する所得税が高額であることもあって、強いて配当をしないことが多くあります。
結果、
①の要素がないため、株価が大きくなってしまうケースがよく見られます。
この点を打破するため、よくやられる方法が事業年度変更なのです。
配当は決算を受けて出すのが通例ですから、決算のタイミングを事業年度変更で早めてしまえば、タイミングを繰り上げて配当することができます。
業績の良い会社が、配当を出してしまえば、3つの要素を満たすので評価額が上がることはないため、相続税対策上、事業年度変更はよく使われます。
しかし、このような王道的な相続税対策も、近年は許されない方向で動いているようです。
先日公開された国税不服審判所の裁決事例においては、この事業年度変更による対策が否認されています。
この事例においては、余命短い被相続人の株価対策のため、その被相続人の取引金融機関の支店長と事業承継の専門税理士が打ち合わせをして、事業年度変更と配当をしたことが問題とされています。
「相続税対策の一環で行った取引はけしからんので、税務上のルールに関係なく税金を追徴しても基本的には問題ない」という最高裁判例を審判所は取り上げました。
そして、本件をけしからんとした税務署の課税処分を合法としています。
王道的な相続税対策についても、このように容赦ない判断がなされてしまいます。
だからこそ、「相続税対策の一環」 であることについて、税務署に把握されないよう細心の注意が必要になっています。
実際、金融機関では 「相続税対策の一環」 で融資したことを把握されないよう、稟議書の記載などにも注意するよう指示が出ている模様です。
私たちもこのような金融機関の対応にならい、相続税調査においては、税務署に 「節税目的があった」 と見られないように注意する必要があります。
税務署に 「けしからん」 とされる節税目的を見せないように、極力税務調査対応を工夫するのが、現代の相続税の税務調査対策では必須になっています。
追伸、
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。









