契約書と実態判断:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官が税務調査対策すべてお話しします_元国税調査官・税理士_松嶋洋

本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

テナントの貸付けには消費税が課税される反面、住宅の貸付けについては消費税が非課税とされます。

住宅の貸付けに該当するかどうか、その判断は原則として契約書によります。

このため、契約書で住宅用とされていたものを事務所として使ったとしても、消費税においてはテナントの貸付けにはならないとされます。

実際、法人の社宅や居住用として他人に転貸する目的で借りる物件については、契約書に住宅という用途を明記して借りれば、支払う賃料に対する消費税は非課税とされます。

一方で、契約書でその用途が明らかにされていない場合には、貸している物件の実態を確認し、消費税の課否を判断するとされています。

その上で、その賃貸借の実態が居住用と特定できるような場合には、その賃料は非課税とされます。

実務においては、物件を借りる場合には契約書においてその用途を明確にすることが通例ですから、住宅の貸付けかどうか、その判断で迷うことは多くありません。

しかし、先日の裁決事例において、この契約書の記載について興味深い判断がなされています。

この事例では、契約書の1条で「貸主は居住の目的をもって使用する」と定められていたためにその賃料を消費税の非課税としていました。

しかし、その契約書の特記事項に「事務所での使用を許可する」という定めがあったのです。

この点を踏まえ、税務当局は住宅の貸付けには当たらないとして、消費税を課税しました。

「許可する」ということは事務所として使われることもある訳で、用途が住宅に特定されているとまでは言えません。

実際、税務当局の通達においても、両方の用途に使える場合には、用途が住宅に特定されていないものとして取り扱うとされています。

このため、この事例では、住宅として貸されているかどうか、実質的な判断がなされることになりました。

この時の実態判断で重視されたのは、この物件の賃貸借契約に至る経緯です。

納税者である貸主は、その申込みを受ける際、看板の設置ができるかどうか、そして玄関ドアに、会社名表札を設置しても問題ないか、借主である法人から問い合わせを受けていた模様です。

この問い合わせを貸主が了承した上で賃借されていたため、実態としては住宅の貸付けには当たらないとして、消費税が課税されるという判断になっています。

本件において、契約書に事務所使用を許可すると規定しなければ消費税は非課税であった訳で、貸主である納税者としては残念な結果になったように思われます。

借主側の事情でこのような特約を入れざるを得なかったのでしょうが、そうなると消費税の負担が発生します。

消費税が課税されなければ、借主としても、消費税分上乗せして支払う必要がないというメリットがある訳ですから、この辺りも含め慎重な交渉が必要と思われます。

追伸、
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

押せば意外に 税務署なんて怖くない

引用元:契約書と実態判断– 経営・会計コンサルティング

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