
贈与者と受贈者、この双方が現時点及び過去10年超日本に住所がない場合、贈与税は国内財産についてのみ課税されることになります。
この場合、贈与を受けた財産が国内財産か国外財産か、その判断を行う必要がありますが、問題になるのはその判断を行うタイミングです。
法令上、これは贈与により財産を取得した時点とされています。
財産の取得と聞くと、税務の専門家は、財産の引渡しを受けたタイミングをイメージすることが通例です。
なぜなら、税理士業務の中心である法人税や消費税において、固定資産や棚卸資産は引渡しを受けたタイミングで取得した、という取扱いが取られているからです。
しかし、贈与税についてはこの理解は正確ではありません。
贈与税が課税される贈与による財産の取得時点は、書面による贈与か否かで異なるとされています。
書面による贈与とは、贈与者の贈与意思を表現した書面がある贈与とされており、一般的には贈与契約書に基づいてなされた贈与を意味します。
書面に基づくものである以上、贈与意思が明確ですから、贈与契約は安易に解除できるようなものではないため、その契約の効力が発生したタイミングで贈与がなされた、と判断されます。
一方で、贈与契約書がないようなケースは、証拠に乏しいということもあり、贈与する財産を受贈者に引き渡すタイミングで、贈与があったとされ贈与税が課税されます。
なお、注意したいのは、契約の効力発生時の贈与になるのであり、贈与契約書の作成日の贈与になるのではない、ということです。
このため、出世払いなど、一定の条件を満たした場合に贈与する契約であれば、その条件成立時で贈与税が課税されます。
このような相違がありますので、財産が国内にあるか国外にあるか、その判定時期についても書面による贈与か否かで異なることになると解されます。
すなわち、贈与契約書があればその効力発生時となり、なければ引渡し時点になるはずです。
例えば、贈与者が海外口座にあるお金を受贈者の日本支店の口座に送金する、といった場合を考えます。
贈与契約書があれば効力発生時の口座の所在が海外なので国外財産、一方で契約書がなければ日本支店に入金される財産であるため国内財産、と判断される可能性が大きいと考えられます。
贈与税については、海外を活用した税逃れが非常に多かったこともあり、現在の法律では原則として海外財産を含めたすべての財産に課税されます。
そして、国内財産の贈与についてのみ課税されるケースは非常に限られています。
だからこそ逆に、国内財産か否かの判定について間違いが多くあると考えられます。
贈与税については、契約の効力発生時が課税の原則的なタイミングであり、法人税などで使われる引渡基準は例外である点、注意が必要です。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。









