
合同会社の税務で疑義があると言われてきた論点の一つに、事前確定届出給与の取扱いがあります。
事前確定届出給与は、役員の職務執行期間中の賞与を所定の方法で予め届け出ることで経費と認められるものです。
しかし、合同会社の役員には職務執行期間がないため、職務執行期間を前提とする事前確定届出給与の支給は認められないという見解がありました。
合同会社は会社法上、上場を目指さない、小規模な事業を行う者が使う会社として想定されています。
このため、株式会社よりも自由な経営をしやすいように立案されており、結果として合同会社の役員については、その任期も定める必要がないとされています。
事前確定届出給与で問題になる職務執行期間とは、役員がその職務を行う期間を意味しています。
株式会社の役員であれば定時総会で就任し、次の総会までが役員の任期とされますので、原則としてその期間を意味するとされています。
しかし、合同会社の役員には任期がないため職務執行期間は存在せず、結果として合同会社には事前確定届出給与は認められない、といった指摘がなされることがありました。
このような見解に対し、長い間税理士の中では疑問の声がありましたが、最近国税庁のホームページの質疑応答事例において、合同会社についても事前確定届出給与を支給できるという税務当局の見解が掲載されました。
しかし、困ったことに、この質疑応答事例の前提となっている合同会社の役員は、「任期のある者」とされています。
このため、任期のない合同会社の役員の事前確定届出給与は認められない、とも読めるのです。
実際、このような解説が税務の専門誌で掲載され、任期のない合同会社の役員に事前確定届出給与が認められないことが明記された、といった指摘が見られます。
しかし、法人税法には、事前確定届出給与の要件としてこのようなことは書かれていません。
このため、正しく法律を読めば、任期のない合同会社の役員に対しても、事前確定届出給与は当然に認められると考えられます。
ところで、実務上合同会社の役員については、会社法の義務ではないため任期を定めることはまずありません。
実際、会社法の専門家によると、任期を設けること自体、会社法の趣旨からして問題で違和感があるということでした。
このため、この質疑応答事例にあるような、任期のある合同会社の役員は通常存在しないはずです。
つまり、税務当局は「任期の定めのない合同会社の役員に事前確定届出給与は認めない」と暗に説明しているとしか思えないのです。
近年は法律でも通達でもない、国税庁ホームページの記述を基にした課税も多いように思います。
これを機に、合同会社の役員に係る事前確定届出給与の処理は、見直す必要があります。法律ではないホームページの記述で課税が決まるのはとんでもない状況ですが。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。












