
税務調査の結果、税務当局から修正申告のしょうようを受けて、その指導の通りの修正申告をした場合。
このような修正申告をしても、後日、その修正申告の内容に誤りがあったため、税金を過大に納付してしまったのであれば、原則としてその還付を請求する更正の請求が認められます。
平成23年の税務調査手続き法制化前には、いったん税務当局の指導に基づいて修正申告をすると、今後更正の請求はできないと言われていました。
なぜなら、その指導に納税者が自発的に従ったことになるからです。
しかし、税務当局であっても、誤った指導をすることもありますから、修正申告後の更正の請求も現在は認められることになっています。
結果として、納税者の救済につながるため、平成23年当時は画期的な税制改正などと言われたものです。
しかし、修正申告後の更正の請求には負の側面があります。
具体例として、税務調査において会社の交際費を経費と認めないとされて修正申告をしたものの、やはり交際費として経費になるとして更正の請求をした納税者につき、それが認められなかった事例があります。
この事例で、更正の請求がNGとされたのは、立証責任を果たしていないとされたからです。
更正の請求は、いったん納税者が行った申告にミスがあって過大に税金を納めた場合に認められるものですから、ミスがあったことについて納税者が立証しなければなりません。
このため、本件においても、会社の業務上必要な交際費であることを納税者が示さないといけない訳ですが、その立証が不十分であると裁判所から判断された模様です。
通常、税務調査の立証責任は税務当局にあるとされていますが、更正の請求はその例外です。
手間がかかる立証を納税者が行わなければならないという点で、更正の請求は通常の申告よりもはるかに不利な手続きですから、この点は理解しておく必要があります。
なお、この事例では、税務当局から、修正申告のしょうように応じなければ、
「賞与課税して多額の税金がかかる」
「反面調査をする」
「不正取引にあたるとして調査期間を七年に延長する」
といった指導があった模様です。
これらの不利益を考慮して、納税者はいったん修正申告をしたと思いますが、それが問題になり交際費の経費性が認められていません。
なお、税務当局の調査官としては、修正申告を提出させて課税すれば仕事が終わります。
その後の更正の請求は担当が変わり、自分の事績や評価には関係ありませんから、「いったん修正申告してから更正の請求をすればいい」といった安易な指導もあるかもしれません。
このような指導に応じると先の事例のような不利益にもつながりますので、慎重に対応方法を検討する必要があります。
むしろ、仕事を早く終えたい調査官としては、修正申告を提出してもらうために譲歩することが多いため、それまでの交渉こそやはり重要なのです。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。











