
本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。
先日、平成28年度改正で封じ込められた少人数私募債の節税について、それを取りやめた会社の処理が問題になった事例があります。
この会社、税制改正前に、オーナーから低金利でお金を借りた上で、そのお金でオーナーが保有する少人数私募債の償還をしました。
問題になったのはこのオーナーからの借入金の金利で、収入した利息が少なすぎるとして、オーナーに対して、あるべき利息を収入したとして所得税が課税されたのです。
ここで税務当局が問題にしたのは、以下の4点です。
① 貸したお金が81億6千万と超高額であること
② 貸したお金は超高額であるにもかかわらず、返済期日についての定めもないこと
③ 担保もなかったこと
④ 貸付利率が税法上適正な利率とされる割合の100分の1又は500分の1程度であって超低金利であること
これだけ聞けば不自然と言わざるを得ませんが、中小企業の実務を踏まえると、特に問題ではないように考えます。
と言いますのも、資金繰りに厳しい中小企業の場合、オーナーが会社にお金を貸すことがありますが、この貸付金については原則として無利息で返済期限も設けていないからです。
しかし、このような条件であっても税務調査で問題視されることはまずありません。
本件のオーナーからの借入金が、一般の中小企業で見られるオーナーからの借入金、専門的には代表者借入金と言われますが、それと異なるのは巨額で、そして利率という時価を判断しやすい指標があったことです。
前者については自明の通りですので後者について補足しますと、資産や取引の時価と言われても、千差万別で通常は税務当局にも分かりません。
しかし、税務上、適正利率の計算は決まっていますので、それは簡単に分かります。
加えて、少人数私募債の返済原資という点からすれば、返済前の少人数私募債の利率も一つの参考になるはずです。
税制改正前の少人数私募債の節税を行う場合、利率を高くすることが通例でしたので、本件の借入金の利率の低さがより目立ったと言えます。
同じ条件でも、多額の取引については税務当局から課税されることがよくありますので、実務で認められているので問題がない、といった考え方は妥当ではありません。
加えて、税務当局は、課税するために税法を拡大解釈することもあるため、課税されるとすればどのような攻め方をするのか、予め彼らの動きを想定して対策を取っておく必要があります。
この点、税理士であれば、本件では利率の多寡を問題視されるのは容易に理解できた話ですから、税務上の適正利率とした方が無難と助言するべきであったと考えます。
実務で通常問題がないとされている取引についても、このように課税されることがあります。
最終的な課税の有無を決めるのは追徴税額の多寡ですから、巨額の節税が絡む取引については、どこまでも慎重でなければなりません。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。










