加算税を減免できる自主修正(申告漏れに対し、自主的に修正申告をすること)については、いつまでそれが認められるのか、そのタイミングが税務調査では問題になります。
この点、原則として税務署が問題点を指摘するタイミング前までなら、自主修正は認められるとされています。
このため、仮に調査官が会社に臨場していなくても、事前に申告書を確認して電話で納税者に間違いを指摘した場合にも、問題点の指摘をしていることから、それ以後は自主修正が認められません。
この問題点の指摘に関してですが、税務調査がなされる前、予め納税者が税務当局に自白をして問題点を告白した後も自主修正が認められるか問題になった裁決事例があります。
この事例においては、元経理事務員が給与の水増しを行ったために過少申告となっていた会社が、その旨を予め税務署に報告をした後、数日たって実際の税務調査がなされています。
税務当局は自白があったものの、税務調査を実施したタイミングでは修正申告が出ていないことを問題にしています。
自白のタイミングでは自発的に修正申告を出す意図はなく、あくまでも税務調査で指導されたために出したとして、自主修正を認めなかったのです。
結果として、重加算税も賦課されています。
しかし、審判所は、
- 自白したタイミングでその会社はきちんと水増しがなされていた期間とそれぞれの期間の金額を記録していたこと
- 納税資金として定期預金を取り崩す意向があったこと
- 税務署はこの自白を契機に調査を実施したこと
これらの事情を踏まえ、この会社は税務調査を待たず自発的に修正申告を出す意向があったと判断しています。
その上で、このような意向が納税者にあってなされた修正申告のため、自主修正が認められると判断しています。
実務上、自主修正が認められるかどうか、その判断は修正申告をいつ出したかだけで判断されることが多いです。
しかし、このように、予め自白してそれから税務調査を受けた後に修正申告をしたとしても、自主修正が認められる場合もあるのです。
このため、税務調査の予告を受けた後、日程調整がなされた後に誤りを発見したものの、実地調査の日程まで十分な時間がなく修正申告が難しいようなケースについて、この事例を活用しましょう。
具体的には、予め調査官にすぐに修正申告する意向である旨伝え、自主修正を認めてもらうよう交渉することも一考の余地があると考えられます。
ただし、税務署は加算税が減る自主修正を嫌いますので、上記のような裁決事例があるにしても、交渉は非常に厳しいものになると考えます。
かく言う私も、税務調査の予告を受ける前、予め自主修正すると申し出ましたら、修正申告を差し止めるように指導を受けたことがあります。
自主修正は税務当局の手間をかけることなく、申告を是正することを奨励する制度ですので、予め自白するようなケースも当然に認められるべきです。
このため、税務当局には毅然とした交渉を行う必要があることはもちろん、余計なリスクを抱えないよう、税務調査の予告がある前から日々申告内容を見直す習慣も付ける必要もあると考えられます。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。