
不動産業者が所有する土地については、販売目的で取得したのであれば棚卸資産とされ、自社が使用する目的で取得したのであれば固定資産として取り扱われます。
固定資産であれば圧縮記帳といった税制上の特例を受けられる場合があるなど、棚卸資産と固定資産で、税務上の取扱いは全く異なります。
このため、その区分は非常に重要です。
しかし、販売目的と自社使用目的という判断基準は非常にシンプルですが、目的は目に見えるものではないため、実務では揉めることが多くあります。
この点を踏まえ、過去の事例を見ますと、具体的な判断基準として、以下のような点が挙げられています。
- 稟議書などの客観的な資料から判断される取得の目的
- 会社の経理においてどちらの資産として区分しているか
中でも、トラブルになりやすいケースが販売目的で購入して棚卸資産とした土地について、転売が困難になったため、自社で使うものとして固定資産に転用したという場合です。
転用したと認められるかどうか、実際の利用形態も重視して判断されることになります。
しかし、固定資産に転用したと主張しているのに、その土地を賃貸していなかったり、自社で利用したりしていないのであれば、固定資産と認められない可能性は大きいと言えます。
とりわけ注意したいのは、実際の利用形態を販売目的から自社利用に変更したとしても、 その変更が転売の妨げにならない程度の軽微なものである場合です。
この場合、固定資産に転用したとは言えないとされる可能性があります。
よくある話ですが、土地は実際に売れるまでは時間がかかるため、売れるまでの間、その土地を一時的に材料置き場などとして、他人に貸すようなケースがあります。
この場合、土地の転売先が決まれば、そのタイミングで賃貸借を廃止して売るはずですから、固定資産に転用したとは言えないとされた事例もあります。
こういう訳で、所有する土地について、棚卸資産とするか固定資産とするか、その取得時の目的や会社の経理処理、そして実際の利用形態を踏まえて判断することになります。
税制上は固定資産とした方が有利なケースが多いため、土地を売ることが中心の不動産販売業者などであっても、自社の土地を固定資産と主張することも多いと思われます。
しかし、最終的には取得の目的や転用した場合の事情などを疎明する客観的な証拠が重要になります。
過去の裁決例ですが、土地を固定資産から棚卸資産に転用した処理が認められた事例があります。
この事例においては、土地の販売について議論した稟議書や、実際に土地の売却交渉をした実例がありました。
それに加え、土地を自社の事務所や賃貸用建物の底地にするといった、自社で利用する目的を示す、固定資産である証拠がないことが重視されています。
土地は高額ですから、自社利用の意向があるなら、それを示す稟議書や建築計画などの資料があるはずで、それがないなら転売が主目的で棚卸資産、という判断がなされています。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。










