
毎年行われる税制改正は自民党の税制改正大綱からスタートすると言われていますが、それには記載されていないものの、非常に大きな税制改正が令和6年4月1日からスタートしています。
それは、日本標準産業分類の改定です。
日本標準産業分類は総務省が統計基準として分類している業種の区分であり、業種ごとに所定の統計を作る場合など、その業種の範囲についてはこれを基に行われています。
総務省の基準なので、税務には関係ないように思われるかもしれません。
しかし、税務において業種を区分する必要がある場合、原則としてはこの基準に則って区分しています。
最もメジャーなものとしては、消費税の簡易課税制度が挙げられます。
この制度は、売上に対する消費税額に、みなし仕入率という概算の経費率を乗じて計算した金額を、控除する消費税額とする消費税法の特例です。
このみなし仕入率は業種によって異なっており、その業種は原則としてこの日本標準産業分類に従って判断することとされています。
その他、非上場株式の評価において、類似業種比準価額方式という方法を使う場合にも、日本標準産業分類は使われることになります。
類似業種比準価額方式は、評価会社の業種に応じ、その業種の平均的な指標をベースに評価会社の株式の評価額を計算します。
しかし、この場合の業種区分も、日本標準産業分類を基礎として判断されます。
なお、令和6年4月1日からの改定をそのまま反映させると、令和6年中の株価が3月までとそれ以降で変わります。
令和7年以後の相続や贈与から、類似業種比準価額方式の計算における業種の判断を、この改定を基準としたものに変えています。
このように、日本標準産業分類の改定は実務に大きな影響を与えるため、税法ではありませんが、冒頭では「税制改正」と表現しました。
しかし、日本国憲法には納税義務など税のルールは法律で決めるという租税法律主義があります。
このため、建前としては誤った表現です。
税の実務では、国税庁の通達やホームページの情報、自民党の税制改正大綱、そして総務省の日本標準産業分類と、法律でないものがむしろ重要になっています。
誰の目にも明らかな日本国憲法違反ですが、憲法の番人である最高裁判所も何ら問題にしていません。
実際、法律で税のルールを全部決めるのは無理ですので、この憲法違反は税の世界では必要なことであるとも言えます。
ところで、憲法は条文ではなく運用が重要と言われます。
憲法の条文に違反していても、税務に関する運用はこのようなものです。
結果として、税務訴訟で租税法律主義違反を問題にしたり、学者が声高に租税法律主義の理念を叫んだりすることに価値はありません。
このため、私たちがやるべきは税務行政や税制改正のチェックです。
一例として、電子保存の義務化など、税務当局や財務省主税局において、不適切な取扱いがないか、そしてそれがあれば厳格に批判することも重要になります。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。









