事前確定届出給与の問題点:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

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本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

役員に対して賞与を支給する場合には、税務署に「事前確定届出給与に関する届出書」を提出しなければなりません。

役員賞与について、無制限に経費にするとなると、法人税をいくらでも節約できます。

このため、予め支給額や支給時期が確定しており、その確定した内容に基づいて支給されるものだけが原則として経費にできるとされています。

その上で、その内容を明らかにするために、役員賞与は予めこの届出書の提出が義務付けられています。

この事前確定届出給与ですが、予め届け出るという仕組みの関係上、非常に融通が利かない制度です。

先日、裁判で争われていた事案に、届出書に書いた支給額と実際の支給額を誤った事例があります。

この事例では、2800万支給するとして届け出たにもかかわらず、現金で支給したのは2500万円でした。

この場合、差額に当たる300万円ではなく、
支給した2500万円の全額が経費として認められないとされています。

おそらくは単純な支給ミスで、賞与の支給を受けた役員としても、仮に賞与額を2800万とする、という通知を受けたのであれば、その金額を貰う権利があると認識するはずです。

実際、税務署の通達の趣旨説明などを見ても、事前確定届出給与については必ずしも現金支給する必要はないとされています。

一時的な資金繰りなど債務として確定している実態があれば、未払でも問題ないと解説されているのです。

しかし、裁判所は帳簿に未払となっている差額の300万について記帳がないことなどを指摘しました。

その上で、会社は2800万を支給する意図はなかったとして、経費として1円も認めなかった税務当局の処分を合法としています。

一歩間違えればこのようにとんでもない状況になるのが事前確定届出給与なのですが、その適用上、「原則としてこの届出書は『職務執行期間』開始日から一月以内に提出すべき」とされています。

この「職務執行期間」とは役員の任期を意味し、「一般的」には定時株主総会から次回の定時株主総会を意味する、と税法を作る財務省主税局が解説しています。

しかし、「一般的」であれば当然に例外も許されるはずです。

このため、定時株主総会ではなく臨時株主総会で役員を選任したり、役員の賞与を決めたりした場合には事前確定届出給与の取扱いはどうなるのか、といった質問が多数寄せられています。

この点、事前確定届出給与は届出を出して、その通り支給するかどうかで経費になるかが異なる非常にシンプルなものです。

そして、役員賞与はかなり大きな金額になりますから、「一般的」な職務執行期間でないと問題が起こる可能性がある、としか回答できません。

困ったことに、税務署としてもこのようなシンプルで金額の大きな項目は、ケアレスミスがあるか否かをチェックするだけですので、非常に税金を取りやすい項目です。

このため、例外的なことはやらず、ケアレスミスを絶対に起こさないよう慎重な処理が必要と言えます。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:事前確定届出給与の問題点– 経営・会計コンサルティング

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