
消費税の課税売上高が年間5億円超となるようなケースは、支払った経費に係る消費税の全額が控除されません。
この場合、個別対応方式と言われる方法などにより、消費税の税額控除額を計算します。
個別対応方式とは、経費に係る消費税がどの売上に対応するかを判断した上で(用途区分)、税額控除額を計算する方法です。
この方法で計算する場合、用途区分において、
- その経費が消費税の課税売上に「のみ」対応するものであればその全額が控除対象
- その経費が消費税の課税されない非課税売上に「のみ」対応するものであれば、その全額が控除対象外
- その経費が上記1及び2以外のものであれば、両者に共通するものとしてその一定割合が控除対象
とされることになります。
このため、個別対応方式においては経費の用途区分が問題になる訳ですが、用途区分で重要な部分は「のみ」という用語です。
課税売上などに「のみ」要する経費がどうか、それは厳密に判断されることになります。
そして、わずかでも課税売上に対応しなければ、両者に共通する経費として控除額が制限されることになります。
一方で、対応していればいい訳ですから、将来の課税売上「のみ」に必要となる経費についても、個別対応方式ではその全額が控除対象となります。
典型例は広告宣伝費です。
将来の売上を作るために、現時点で支出する広告宣伝費は将来の売上に直接対応しますので、その売上が課税売上であれば広告宣伝費に係る消費税は全額控除できます。
将来の課税売上に「のみ」対応する経費も全額控除の対象になるのであれば、当然ながら過去の課税売上に「のみ」対応した経費も全額控除の対象になるはずです。
この点、裁判で争われた事例があるのですが、具体的にはテナント物件の解体工事費用などがこれに該当すると考えられます。
テナントの賃料は消費税の課税売上になるため、その物件を解体する費用は賃料が発生した結果生じるものと言えます。
このため、このような費用は課税売上「のみ」対応する経費になるはずです。
しかし、裁判所はこのようには考えていないようです。
この事例では、建物を解体した後、土地を地主に返還したため、解体費用は土地の返還に対応する経費とされました。
土地の返還は消費税の対象になりませんから、課税売上「のみ」でも非課税売上「のみ」でもなく、共通する経費に該当し、消費税の控除が制限されると裁判所は判断したのです。
言うまでもなく、事業とはそれを廃業するまでを意味します。
このため、テナント賃料を得る事業は、建物を解体して土地を返還する時まで継続することになります。
そうなると、この事業からは課税売上しか発生しませんので、解体費用も課税売上「のみ」が発生していた結果として必要になった費用ですから、課税売上「のみ」に対応すると解釈すべきです。
土地の返還のための経費、という裁判所の考えはあまりにも安直と言えます。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。









