会計事務所とは?6つの種類と仕事内容・求める人材まで徹底解説

会計事務所業界の成熟による競争の激化、また、クラウド会計ソフトなどテクノロジーの進化により税理士や会計事務所の生き残りも簡単ではなくなってきました。

しかし、そんな中でも巧みな戦略によって着実に実績を出し、成長を続ける会計事務所や、ニッチなポジションを獲得し着実に利益を出す会計事務所も存在しています。

ここでは、数ある会計事務所をその特徴や戦略から6つの種類に分類し、「サービスの特徴」「クライアント・顧客の特徴」「求める人材の特徴(転職・求人の特徴)」の3点から徹底解説しています。

あわせて、会計事務所の定義や基本的な仕事内容といった基礎知識もあわせて解説していきますので、これから会計事務所への就職・転職や独立開業を考えている方はぜひ参考にしてください。会計事務所への依頼を検討している経営者・個人事業主の方向けの選び方のポイントも、記事の後半で紹介しています。

この記事の要点

  • 「会計事務所」は法律上の名称ではなく、税理士事務所・税理士法人などを指す俗称・総称です。税理士資格を持つ人だけでなく、事務所で働くスタッフや業界を目指す方にとっても押さえておきたい基本用語です。
  • 主な仕事内容は、記帳代行・決算書の作成・税務申告・巡回監査(月次訪問による経理指導)・給与計算・融資や補助金の相談支援などです。
  • 税理士登録者数は82,297名、税理士法人数は5,304法人(令和8年6月末日現在、日本税理士会連合会「税理士登録者数」)で、業界全体としても法人形態への移行が進んでいます。

目次

会計事務所とは何をするところか

「会計事務所」という言葉は、実は法律で定義された正式名称ではありません。税理士が個人で開業している「税理士事務所」や、複数の税理士が共同で法人化した「税理士法人」、あるいは公認会計士が運営する事務所などを含めて、世間一般では「会計事務所」と呼ぶことが多いというのが実態です。

外部から見ると、看板が「〇〇税理士事務所」であっても「〇〇会計事務所」であっても、提供しているサービス内容に大きな違いがあるわけではないケースがほとんどです。そのため本記事では、税理士事務所・税理士法人・公認会計士事務所などを含む総称として「会計事務所」という言葉を使い、これから会計事務所で働く方・開業を目指す方が、業界の全体像とタイプを把握できるように解説していきます。

税理士事務所・税理士法人・監査法人との違い

会計事務所という言葉の中には、法律上の位置づけが異なるいくつかの組織形態が含まれています。それぞれの違いを簡単に整理します。

  • 税理士事務所:税理士が個人事業主として開業している事務所。小規模で、所長税理士自身が顧問先と密接に関わるケースが多いのが特徴です。
  • 税理士法人:複数の税理士が共同出資して設立する法人形態の事務所。組織的な運営がしやすく、支店展開や専門分野ごとの分業がしやすい点がメリットとされています。
  • 監査法人:公認会計士が5名以上で設立できる法人(公認会計士法第34条の7)で、主に上場企業や大企業の法定監査(会計監査)を担います。中小企業向けの税務顧問を主業務とする会計事務所とは、顧客層・業務内容の両面で性質が異なります。

「税理士事務所」と「税理士法人」は名称こそ違うものの、提供するサービスの範囲はよく似ています。一方で、法人としての組織形態や事業承継のしやすさ、複数拠点でのサービス提供力といった点では違いが出やすく、働く側から見ても組織体制やキャリアパスに関わるポイントです。この2つの違いをより詳しく知りたい方は、「税理士法人と会計事務所の違い」で個人事務所と法人化のメリット・デメリットを詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

会計事務所の主な仕事内容

会計事務所が顧問先に提供するサービスは多岐にわたりますが、代表的なものは次の通りです。

  • 記帳代行:日々の取引を会計ソフトに入力し、帳簿を作成する業務。クラウド会計ソフトの普及により、顧問先自身が入力し会計事務所がチェック・指導する形式も増えています。
  • 決算書の作成:年に一度の決算にあわせて、貸借対照表・損益計算書などの決算書類を作成します。
  • 税務申告:法人税・消費税・所得税などの申告書を作成し、税務署へ提出する代理業務です。
  • 巡回監査(月次訪問):月に一度程度、担当者が顧問先を訪問(またはオンライン面談)し、経理処理の確認や経営状況の報告・相談を行います。
  • 給与計算:従業員の給与計算や社会保険手続きに関わる事務を代行するケースもあります。
  • 融資・補助金支援:金融機関からの融資に必要な書類作成の支援や、補助金・助成金の情報提供・申請サポートを行う事務所もあります。

どこまでのサービスを標準対応とするか、オプション扱いとするかは事務所ごとに差があります。これらの業務は、会計事務所で働くスタッフが日々担当する仕事内容そのものでもあり、事務所によって任される業務の幅や専門性の深さが変わってきます。

会計事務所の種類

会計事務所は、それぞれが得意とする分野やクライアント層によって、いくつかのパターンに分類できます。ここでは代表的な6つのタイプを、「サービスの特徴」「クライアント・顧客の特徴」「求める人材の特徴(転職・求人の特徴)」の3つの観点から紹介します。それぞれの観点をより詳しく知りたい方は、各タイプの配下記事もあわせてご覧ください。

  • 一般的な会計事務所:特定の業種やクライアント層に偏らず、地域の中小企業や個人事業主を幅広くサポートするタイプです。幅広い業種・規模のクライアントに対応するため、特定分野の専門性よりもコミュニケーション力や基礎的な実務対応力を幅広く身につけたい方に向いているといわれます。
  • ワンストップ型・総合型の会計事務所:税務だけでなく、労務・法務・M&A・資産運用など周辺分野の専門家と連携し、経営に関する相談をまとめて受けられる体制を整えているタイプです。他士業と連携しながら経営相談まで踏み込む機会が多く、税務以外の分野にも関心を持ち幅広い知識を吸収したい人材が求められる傾向があります。詳しくは「ワンストップ型・総合型の会計事務所とは」をご覧ください。
  • 国際税務に強い会計事務所:外資系企業の日本進出、海外進出する日本企業の税務、移転価格税制など、国境をまたぐ取引に関する専門知識を持つタイプです。英語力や海外の会計・税務制度への関心を持つ人材が求められやすく、語学力を生かしたキャリアを目指す方に向いているタイプです。詳しくは「国際税務に強い会計事務所とは」をご覧ください。
  • 証券化・SPCに強い会計事務所:SPC(特別目的会社)の会計・税務やストラクチャードファイナンスといった、証券化スキームに特化したタイプです。金融・ファイナンスに関する専門知識を要する分野のため、数字や契約スキームを読み解くことに強い関心を持つ人材が求められる傾向があります。
  • 資産税に強い会計事務所:相続税や事業承継、企業オーナーの資産税対策など、個人資産や事業承継に関わる税務を専門とするタイプです。個人の資産背景や家族関係など機微な情報を扱う場面が多く、専門知識に加えて丁寧なヒアリング力・対人対応力が求められる傾向があります。詳しくは「資産税に強い会計事務所とは」をご覧ください。
  • 業種特化型の会計事務所:医療・建設・飲食・美容など、特定の業種の商習慣や会計処理の特殊性に精通しているタイプです。特定業種の商習慣や業界特有の会計処理を深く学ぶ意欲がある人材が求められやすく、将来その業種に強い専門家として独立を目指す道にもつながりやすいタイプです。詳しくは「業種特化型の会計事務所とは」をご覧ください。

自分がどのような分野に関心があるか、将来どのようなキャリアを描きたいかによって、向いている会計事務所のタイプは変わってきます。就職・転職先を探す場合も、将来の独立開業を見据えて経験を積む事務所を選ぶ場合も、まずは自分が伸ばしたいスキルや関わりたいクライアント層を整理してから探すと、ミスマッチを避けやすくなります。

規模による違い(個人事務所・中堅・大手・BIG4)

会計事務所は種類だけでなく、規模によってもサービスの特徴が変わります。

  • 個人事務所:所長税理士が顧問先と直接やり取りすることが多く、小回りが利きやすい一方、対応できる業務範囲や人員体制には限りがあります。
  • 中堅の税理士法人:複数の税理士・スタッフを抱え、記帳から決算・相続・事業承継まで幅広く対応できる体制を持つ事務所が多く見られます。
  • 大手税理士法人:全国に拠点を持ち、業種別・専門分野別のチーム体制を敷いていることが多く、大企業やグループ会社の複雑な税務にも対応しています。詳しくは「大手税理士法人とは」をご覧ください。
  • BIG4税理士法人:世界的な会計ネットワークに属する税理士法人で、国際税務や大企業のグループ税務、M&Aに伴う税務デューデリジェンスなどを主に手がけます。詳しくは「BIG4税理士法人とは」をご覧ください。

一般的に、規模が大きくなるほど専門分野の広さや対応力は増す一方、個人事務所では所長との距離の近さや裁量の大きさが特徴になりやすい傾向があります。働く側から見ると、規模によって経験できる業務の幅やキャリアパスの広がり方が変わってくるため、自分がどのような経験を積みたいかに合わせて事務所を検討することが重要です。

会計事務所で働く

会計事務所には、税理士資格を持つ有資格者だけでなく、資格取得を目指しながら実務経験を積む「税理士試験科目合格者」や、記帳代行・データ入力を担当するスタッフ、法人化された事務所であれば社会保険労務士や中小企業診断士など他の専門家が在籍していることもあります。

近年はクラウド会計の普及やDXの進展により、単純な入力作業だけでなく、経営相談やコンサルティングに近い役割を担うスタッフの需要も高まっています。会計事務所への就職・転職を考えている方は、事務所ごとの職種や業務内容、キャリアパスの違いも押さえておくとよいでしょう。税理士試験の科目合格を重ねながら実務経験を積むキャリアパスは会計事務所ならではの特徴であり、勉強と仕事を両立しやすい環境かどうかも、事務所選びの際に確認しておきたいポイントの一つです。職種別の仕事内容や必要なスキルについては「会計事務所の仕事大百科」で詳しく紹介しています。

自分に合う会計事務所タイプの見極め方(働く方・開業を目指す方向け)

会計事務所と一口にいっても、タイプや規模によって業務内容や求められる人材像は異なります。就職・転職先を探す場合も、将来の独立開業を見据えて経験を積む事務所を選ぶ場合も、料金の安さや知名度だけでなく、次のような観点で自分に合う事務所を見極めることが大切です。

  • 専門特化型かゼネラリスト型か:特定の分野を深く極めたいのか、幅広い業務に対応できる力を身につけたいのかによって、向いている事務所のタイプは変わります。
  • 規模による経験の幅:個人事務所は裁量が大きく幅広い業務に触れやすい一方、大手・BIG4は専門分野ごとの分業体制が進んでいる傾向があります。どちらでどのような経験を積みたいかを考えることが大切です。
  • 税理士試験の勉強との両立のしやすさ:繁忙期の負荷や勤務時間の融通のしやすさ、勉強時間の確保のしやすさは事務所によって異なります。受験生の採用実績や支援制度の有無は、募集要項や面接で確認しておくと安心です。
  • 将来の独立開業を見据えた経験:独立開業を将来的に考えている場合は、開業後に扱いたい分野(資産税・国際税務・業種特化など)に強い事務所で経験を積むという視点も有効です。

それぞれの事務所タイプで求められる人材像や向いている人の傾向については、前述の「会計事務所の種類」セクションおよび各配下記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

良い会計事務所の選び方(依頼を検討している経営者・個人事業主の方向け)

会計事務所を顧問先として選ぶ際、料金の安さだけで決めてしまうと「思ったより対応が遅い」「相談したいことに詳しくない」といったミスマッチが起こりがちです。ここでは、経営者・個人事業主の目線で確認しておきたいポイントを整理します。

  • 自社の業種・課題への専門性:一般的な税務対応だけでなく、自社の業種特有の会計処理や、相続・事業承継、国際税務など個別の課題に対応した実績があるかを確認しましょう。
  • 対応のスピードと頻度:月次訪問(巡回監査)の頻度、問い合わせへの返信スピードなど、日常のコミュニケーションの取りやすさは事務所によって差があります。
  • 担当者との相性:実際にやり取りする担当者の説明のわかりやすさや、経営者の考え方への理解度も、長く付き合ううえで重要な要素です。
  • 対応できる業務範囲:記帳・決算・申告だけでなく、融資支援や補助金申請、給与計算、資産税相談まで一括して依頼できるか、それとも都度別の専門家を探す必要があるかを事前に確認しておくと安心です。
  • クラウド会計・ITツールへの対応力:自社が使っている(あるいは導入したい)会計ソフトやクラウドツールに対応しているかどうかも、日々のやり取りの効率に直結します。
  • 料金体系の明確さ:顧問料に何が含まれ、何がオプション(追加料金)になるのかが明確に説明されるかどうかも、信頼できる事務所かどうかを見極める材料になります。具体的な料金相場は事務所の規模やサービス範囲によって幅があるため、複数の事務所から見積もりを取って比較することをおすすめします。

「安さ」ではなく「自社にとって必要なサポートを、適切なスピードと専門性で提供してくれるか」という軸で比較することが、顧問先選びで後悔しないための基本的な考え方です。

会計業界の動向

会計事務所を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変化しています。

  • クラウド会計の普及:クラウド会計ソフトの普及により、顧問先自身が日々の記帳を行い、会計事務所はチェックや経営アドバイスに注力するという役割分担が広がっています。
  • 法人化・M&Aの進展:個人の税理士事務所から税理士法人への移行や、事務所同士のM&A・統合が進んでおり、組織的な事務所運営を志向する動きが見られます。
  • 国際化への対応:海外進出する中小企業の増加や、外資系企業の日本進出に伴い、国際税務に対応できる会計事務所へのニーズも高まっています。

日本税理士会連合会の公表資料によると、税理士登録者数は82,297名、税理士法人届出数は5,304法人となっています(令和8年6月末日現在、出典:日本税理士会連合会「税理士登録者数」)。法人届出数の規模からも、個人事務所から法人形態への移行が業界全体で進んでいることがうかがえます。

こうした業界動向は、会計事務所で働く人や独立開業を目指す人のキャリア選択にも影響します。クラウド化やDXの進展により、単純作業よりも経営相談・コンサルティング的な役割を担えるスタッフの需要が高まる傾向にあり、国際化の進展は語学力を生かせるキャリアの選択肢を広げる方向に働くと考えられます。

よくある質問

Q. 会計事務所と税理士事務所の違いは何ですか?
A. 「会計事務所」は正式な法律用語ではなく、税理士事務所や税理士法人などを指す一般的な呼び方です。看板の違いによってサービス内容が大きく変わるわけではなく、実際には個人事務所か法人かという組織形態の違いであることがほとんどです。詳しくは「税理士事務所・税理士法人・監査法人との違い」をご覧ください。

Q. 会計事務所には何を頼めますか?
A. 記帳代行・決算書の作成・税務申告・巡回監査・給与計算などが基本的な業務です。事務所によっては融資支援や補助金申請のサポート、相続・事業承継の相談まで対応しています。依頼できる範囲は事務所ごとに異なるため、契約前の確認をおすすめします。

Q. 個人事業主でも会計事務所に依頼できますか?
A. 依頼できます。多くの会計事務所は法人だけでなく個人事業主も顧問先として受け入れており、確定申告のサポートを主業務とする事務所も多くあります。

Q. 税理士資格がなくても会計事務所で働けますか?
A. 働けます。会計事務所には税理士有資格者だけでなく、税理士試験の科目合格を目指しながら実務経験を積むスタッフや、記帳代行・データ入力などを担当する未資格のスタッフも多く在籍しています。求められる資格や実務経験のレベルは事務所によって異なるため、募集要項や面接で確認することをおすすめします。

Q. 税理士試験の勉強と会計事務所での仕事は両立できますか?
A. 事務所によって繁忙期の忙しさや勤務時間の融通のしやすさが異なるため、一概にはいえません。税理士受験生の採用に積極的で、勉強時間の確保に配慮した勤務体系を用意している事務所もあります。就職・転職活動の際は、勉強との両立支援の実績や制度について事前に確認しておくと安心です。

まとめ:会計事務所の種類をさらに詳しく知る

会計事務所とは、税理士事務所・税理士法人などを含む総称であり、記帳代行から決算・申告、経営相談まで幅広い業務を担っています。事務所ごとに得意分野や規模、求められる人材像は異なるため、これから会計事務所で働きたい方・独立開業を目指す方は、自分が伸ばしたいスキルや積みたい経験に合ったタイプの事務所を選ぶことが、納得のいくキャリア形成のポイントです。

それぞれの分野についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

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