相続財産は土地か債権か(契約解除の場合):元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

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本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

土地の売買契約を締結した後、引渡しの前に売主に相続が発生した場合の相続財産の取扱いです。

この場合、相続税の申告対象となるのは、引渡しがなされる前の土地ではなく、売買代金という債権とされています。

民法上、契約により所有権が移転します。このため、契約が締結された以上、土地は買主に移転しており、売主はその土地の代金を請求する債権を有しているとされます。

土地か債権かで財産の評価は全く異なりますので、この整理は非常に重要です。

その一方で、法人税や所得税は、契約締結時ではなく実際に引き渡したタイミングで土地が買主に移転するとされています。

このため、税法に詳しければ詳しい方ほど、この取扱いを間違えてしまいます。

とりわけ、相続税の対象になる評価額としては、金額が明確な債権の方が高いことが多く、土地として評価してしまうと相続税の追徴に繋がりやすく、不利益を受ける可能性が大きいです。

関連して、さらに間違い易い論点として、相続人がこのような契約を解除した場合の取扱いがあります。

相続人が相続税の申告期限までに、相続前に被相続人が結んだ、引渡し前の土地の売買契約を手付金の倍返しにより解除した場合の取扱いです。

先ほどとは異なり相続財産になるのは、債権ではなく原則として土地になると判断した判例があります。

この理由は、契約を解除すると、民法では遡って取引がなかったこととなるからと説明されています。

しかし、法人税の場合、契約を解除しても遡って処理を訂正する、ということはありません。

このため、法人税の感覚であれば、解除前の債権を相続財産と判断してしまう可能性があります。

加えて、相続税においては、相続時点で財産を評価することとされています。

このため、「相続時点では契約は解除されていなかった」と判断する可能性もあります。

更に困ったことに、この場合の解除、すなわち相続税で申告するべき財産の種類が変わる解除には、買主と合意して行われる合意解除が含まれないとした判例もあります。

この事例においては、先の通り債権で評価すると相続税が高くなるため、相続税の申告が終わった後また相続人と買主とで売買契約を行うことを予定した上で敢えて合意解除をし、土地として申告したものです。

しかし、税負担の軽減を目的とした合意解除を認めてしまうと、相続税の負担が減るため妥当ではないと裁判所は判断したのです。

このため、解除の種類や解除の目的も踏まえたところで判断しなければなりません。

以上の通り、土地の売買契約中に売主である被相続人が亡くなると非常に複雑な問題が起こります。

この点、相続税の申告をサポートする税理士も、その仕事は法人税が中心ですので誤解しやすいです。

加えて、税理士は契約の解除など、民法については弁護士などが専門家で詳しくありませんので間違えてしまうことも多いのです。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:相続財産は土地か債権か(契約解除の場合)– 経営・会計コンサルティング

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