税に対する公平感への悪影響が危惧される調査事例:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

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本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

税務当局が「税に対する公平感への悪影響が危惧される調査事例」として、いくつか悪質と判断した事例について、政府税制調査会において説明したことが話題になっています。

この調査事例は6つほど挙げられており、中でも

(1)更正の請求時に行われた仮装隠ぺい取引や
(2)長期に渡る無申告などについては、その弊害

を防止するため、今後の税制改正で防止規定が措置される可能性がある、といった報道もなされています。

税額計算を間違えてしまい、過大に税金を納めてしまったような場合には、納めすぎた税金を還付してもらうために、更正の請求が認められます。

更正の請求は現状5年間認められることもあり、広く行われていますが、先の調査事例で問題とされているのは、更正の請求において不正行為を行って還付を請求したとしても、その不正な還付金額に遅滞して重加算税を課税することができない、ということです。

売上除外などの隠ぺい行為や架空経費を計上する仮装行為に基づいて「申告」を行うと、重加算税という高額のペナルティーが課されます。

しかし、更正の請求は「申告」ではありませんので、現状は重加算税の対象にならないとされています。
このため、架空の経費の領収書を作成し、経費の計上もれがあるとして更正の請求を行った納税者には、重加算税を課税できなかった模様です。

次に、無申告は1年でも好ましくありませんが、高額な所得があるのに数年間にも渡り無申告だった事例があるようです。
通常、このような連年無申告は重加算税の対象になると言われますが、連年無申告に対して重加算税を課すためには、意図的に申告していないことが客観的に分かるくらいの事実関係が必要とされています。

このため、悪質性はあると判断されるのに、十分な証拠がなく重加算税を課税できない場合もあるようです。

具体的に法改正されるか、そして法改正されるとしてどのような仕組みになるか、執筆時現在においては分かりませんが、仮にこれらを防ぐ税制改正が実現すれば、税務当局が重加算税を課税するケースが増えることは間違いありません。

言うまでもなく、不正は論外ですので、今まで以上に適正な申告を行うことに心がける必要があります。

その他、この調査事例の中には、「調査時に資料の提示・提出を拒否・遅延された事例」も紹介されています。

「遅延」とありますので、これだけ聞くと税務調査対策の王道である税務調査の長期化について、税務当局が厳しい目を向けるようになったという印象を受けます。

しかし、資料を読む限り、あくまでも「正当な理由なく」長期化することを問題にしていることが読み取れます。
正当な理由があれば長期化は今後も問題ない訳ですから、長期化させるための合理的な理由を用意するとともに、それが合理的であることについて逐一国税調査官の了解を得ながら、税務調査をうまく乗り切ることとしましょう。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:税に対する公平感への悪影響が危惧される調査事例 – セブンセンスグループ – 経営・会計コンサルティング

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