贈与があった場合には贈与税の課税対象になりますが、この贈与があったかどうか、その判断は実は非常に難しいです。
なぜなら、贈与は贈与をする贈与者の贈与する意図、そして贈与を受ける受贈者の贈与を受ける意図が合致して成立するとされているからです。
「贈与する意図」も「贈与を受ける意図」も主観的なもので証拠が残りづらいですから、客観的に贈与があったと立証することは難しいです。
このため、贈与税を課税する場合には、税務当局は贈与があったことを客観的に立証しなければならず、非常に困難です。
この点を踏まえ、税務当局は登記をする不動産や登録が必要な自動車などについては、特別な判断基準を設けています。
具体的には、その所有者の名義を変更したタイミングにおいて当事者間でお金のやり取りがなければ、原則としてその名義変更を贈与とするとしています。
無償で所有者の登録が変わる訳ですから贈与があったと推定できますので、このような取扱いが設けられています。
その一方で、単純ミスや誤解で名義を変えてしまうような、贈与したりもらったりする意図がないのに登記や登録を変えることもあり得ます。
このような場合は贈与として取り扱うことは妥当ではありません。このため、
① 単純ミスなどで名義を変えたことが客観的に確認できる
② 贈与税の申告等の期限までに名義を真実の所有者に戻す
こうすれば、いったん名義を変えたとしても、贈与として取り扱うことはない、とも税務当局の通達で規定されています。
ところで、上記の取扱いについて、この要件に則っていない場合にも、贈与とされないかどうか問題になった裁決事例があります。
この事例では、父が車の購入資金を出したものの、その登録の名義人は子とされていました。理由として、子供名義で車を買うと、売主から特典が与えられたからです。
すなわち、単に子供の名義を借りているにすぎませんから、購入資金はもちろん、税金や維持費の支払いも父が行っていました。
このため、父も子も車の贈与があった、という認識はなかった訳ですが、税務当局は税務調査の際、名義を真実の所有者である父に戻していないことを指摘しました。
その上で、上記②の通達の手続に則っていないため贈与がなかったとすることはできないとし、贈与税を課税したのです。
もちろん、裁決ではこの課税は取り消されています。
通達は税務当局の内部の命令ですので、納税者はそれに従う必要はないという大原則があるからです。
このため、上記通達の手続に則っていなくても、贈与の意思も受贈の意思もないことを納税者が客観的に示すことができれば贈与などない訳で、そうなると贈与税も課税されません。
なお、この事例では子が車種や色について、意見を述べていない点も重視されています。贈与を受けるなら、当然父にこれらの意見も言うはずだからです。
常識に照らして贈与を受けるならどういう行動をとるか。この点も踏まえ税務当局と交渉する必要があります。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。