賃上げ税制の超過額の繰越しの注意点:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官が税務調査対策すべてお話しします_元国税調査官・税理士_松嶋洋

本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

令和6年度改正においては、企業の賃上げを促進する目的から賃上げ税制の大きな改正が実現しています。

とりわけ重要な改正は、中小企業限定ですが、一定の要件を満たす場合、賃上げ税制の控除限度額の超過額の繰越が認められることとされました。

賃上げ税制は、賃上げした企業について、その賃上げ額の一定額を法人税から控除するという制度です。

ただし、控除できる金額は法人税額の20%という限度額があります。

従来はこの限度額を超えると、超えた超過額は切り捨てられました。

しかし、令和6年度改正後は5年間繰り越すことができ、次年度以降で控除できます。

とりわけ、赤字の法人については、法人税額が0ですから、令和6年度改正前は賃上げ税制を使うことができませんでした。

しかし、現状は将来黒字になる年度に超過額を繰り越して、その年度で賃上げ税制を使うことができます。

その一方で、過去の超過額を繰り越すということは、手続きが厳しい点には注意が必要です。

実際、3つほど誤りやすい手続きがあります。

一つは、赤字であっても賃上げ税制の計算の明細を添付する必要があるということです。

先の通り、以前は赤字であれば賃上げ税制は使えなかったため、特に計算もしていませんのでした。

しかし、今後は超過額を繰り越すため、賃上げを行った年度で計算を行い、別表も添付する必要があります。

結果として、赤字の年度でも計算をした上で別表を確定申告書に添付する必要があり、添付もれがあれば、超過額を繰り越して将来の年度で使うこともできません。

次に、繰り越すということは毎年その金額を明らかにしなければなりません。

このため、新たに超過額が発生した年度から毎事業年度、その超過額の明細を確定申告書に添付する義務が設けられます。

この明細については、赤字のため超過額について賃上げ税制が使えない年度や賃上げ税制の要件を満たさない年度も添付しなければならないとされています。

最後に、この超過額の明細ですが、将来の黒字と相殺できる青色申告の欠損金と同様、「連続提出」という要件が付されていることに注意が必要です。

連続提出とは、超過額が発生した年度からその超過額を使う年度までのすべての年度の確定申告書を提出することを意味します。

このため、途中で申告がもれている年度があれば、その場合には将来使えるはずの超過額が切捨てられることになるため注意が必要です。

とりわけ、賃上げ税制の超過額を繰り越す場合の連続提出は、「青色申告書」である確定申告書を連続提出しなければならないとされています。

結果として、途中の年度で青色申告を取り消されて白色申告になってしまうと、毎年提出していたとしても超過額を使うことができなくなってしまいます。

このように、賃上げ税制の繰越しには、手続き面に細心の注意が必要になります。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:賃上げ税制の超過額の繰越しの注意点– 経営・会計コンサルティング

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