ラップ口座の相続は譲渡所得でいいのか?:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

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本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

相続をメインにする税理士の中で疑問になっている論点の一つに、被相続人のラップ口座に関する取扱いがあります。

ラップ口座は投資一任口座と言われ、投資家が証券会社と契約を結び、実際の運用を専門家に任せる口座を言います。

簡単に言えば投資のプロにお金を預けて運用させる、というものです。

そして、その口座で上場株式などを売り買いして資産運用することになりますが、問題になるのはその利益に対する課税です。

国税庁の見解によると、ラップ口座で上場株式などを売買した場合の利益は、原則として事業所得か雑所得に当たるとされています。

通常、サラリーマンなどが資産運用を目的に株の譲渡を行えば譲渡所得として課税されることになります。

しかし、ラップ口座については、プロに任せた上で、継続的に利益を得ることを目的に運用させています。

このため、素人の資産運用とは異なり、プロ投資家の株取引と同様に、事業所得か雑所得で課税するとしています。

ここまでは明記されていますので特に問題はありませんが、疑義が生じているのはラップ口座を開設していた被相続人が亡くなった場合です。

ラップ口座の特殊性として、運用を委託した投資家が死亡した場合には強制解約となります。

そして、運用途中で保有している上場株式などの資産は、そのタイミングで全額売却されて換金されることになります。

換金されるとなると、その利益を申告しなければなりませんが、この場合それを申告するのは被相続人ではなく相続人とされています。

すなわち、被相続人が死亡したタイミングでラップ口座の上場株式などを相続人がいったん取得し、取得後譲渡したという取扱いになる訳です。

このため、相続人は相続税と上場株式等の譲渡の申告が必要になります。

ところで、相続財産を一定期間内に譲渡した場合、相続税の取得費加算という特例が認められます。

この特例は、相続財産を譲渡した場合、その財産に対する相続税を、取得費に加算して譲渡所得を節税できるものです。

しかし、この特例は相続財産の譲渡が譲渡所得でなければ使えません。

ラップ口座については、事業所得か雑所得になる訳ですから、そうなると、ラップ口座を相続した後の相続税の取得費加算は使えない可能性があります。

この点、相続人はラップ口座の運用にタッチしていないため、ラップ口座の強制解約の伴う株式の譲渡は譲渡所得に該当する、という指摘があります。

しかし、継続的な営利活動だから事業所得か雑所得になるという理屈からすると、事業廃止までを一つのサイクルと考える必要があると思います。

そうなると相続人が申告するべきラップ口座の利益も、事業所得か雑所得とすべきであり、相続税の取得費加算は使えない可能性があると考えています。

なお、権威ある税務雑誌の先日の記事では強制解約に伴うラップ口座の株式の売却は譲渡所得と解説されました。

ただし、公的見解ではないため、国税庁の明確な見解が期待されます。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:ラップ口座の相続は譲渡所得でいいのか?– 経営・会計コンサルティング

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