会計税務のデジタル化はどこへ向かう?弥生の代表が語った会計業務の未来図とは?:弥生PAPカンファレンス2019秋・東京レポート(前編)

会計税務のデジタル化はどこへ向かう?弥生の代表が語った会計業務の未来図とは?:弥生PAPカンファレンス2019秋・東京レポート(前編)『弥生会計』でお馴染みの弥生株式会社様(以下、弥生)では、税理士や公認会計士の方々を対象にしたアドバイザープログラム「弥生PAP」(やよいぱっぷ)を運営されており、その会員の皆様向けに弥生や業界のトレンドをお届けする弥生PAPカンファレンスを年2回開催されています。

今回の弥生PAPカンファレンス2019年秋は、法令改正による影響と、業務効率化をメインコンテンツに、全国7会場(東京、大阪、名古屋、広島、福岡、札幌、仙台)で開催されました。

今回、前編と後編の2回に渡り、2019年11月1日、東京・ベルサール秋葉原にて開催された弥生PAPカンファレンス2019秋(東京)の模様をお届けします。

※記事内のスライドはすべて弥生PAPカンファレンス2019秋(東京)にて用いられたものです。

弥生PAPカンファレンス2019秋(東京)プログラム

弥生ロゴ

  • 弥生の経営概況報告、今後の方針(弥生株式会社 代表取締役社長 岡本浩一郎)
  • 生産性向上の具体策について講演(株式会社名南経営コンサルティング)
  • 弥生PAP会員による事例発表
    • ツール活用による生産性向上実現の取り組みとその効果について(三反田会計事務所)
    • 業務標準化による生産性向上の取り組み(アップパートナーズグループ長崎オフィス)
  • 弥生製品の最新機能や弥生PAP会員サービス強化ポイントの紹介(弥生株式会社)

本記事の目次

弥生の代表が語った会計業務の未来図とは?

2019年10月1日から、消費税法及び地方消費税法の税率引き上げと軽減税率制度が導入されるとともに、2019年5月24日にデジタルファースト法が成立し、行政手続きが電子化されるなど、税務を取り巻く環境は目まぐるしく変化を続けています。

「環境や制度が変わり、業務が複雑化する一方で、採用難で人材は減少している。」と先行きに不安を感じている会計事務所経営者の方は、多いのではないでしょうか。

そのような中、カンファレンスの前半では、弥生株式会社の代表取締役社長 岡本浩一郎氏が海外視察から得た海外のデジタル化の潮流や、OECDが提唱する新しい徴税のコンセプトから、日本の税務会計業務が今後どの方向に向かうのか、税務会計業界の未来図への見解を述べました。

前編では、岡本代表のプレゼンテーションをお届け致します。

弥生PAPカンファレンス2019秋_前編_岡本代表

弥生株式会社 代表取締役社長 岡本浩一郎 氏

紙と電子データの共存から、すべてがデジタル化される次世代ステージへ

デジタル手続法施行後、行政手続きが原則として電子申請に統一される流れを受けて、岡本代表は「これまでは紙を前提として一部を電子化してきたが、これからは、すべての業務がデジタル化される。現在のステージ1から3に変化していくことになる。」と説明されました。弥生PAPカンファレンス2019秋_前編_図1

海外諸国のデジタル化の傾向から見える、今後の納税システムのあり方

弥生PAPカンファレンス2019秋_前編日本の会計・税務業務の将来を予測するに当たり、岡本代表からは、まず海外のデジタル化の導入事例の報告がありました。

オーストラリア、イギリス、イタリアのデジタル化の導入事例
  • オーストラリア:給与支払報告のデジタル化(2018年7月導入)
  • イギリス:税務申告まで一貫したデジタル処理を義務付け(2019年4月導入)
  • イタリア:電子インボイス(2019年1月導入)

 

諸外国のデジタル化の対象が、給与やインボイスなど、申告以前の取引、会計記録などであること、また、申告以前のデータを、歳入庁(日本における国税庁)が管理しているという2点を指摘し、これらの共通点は今後の税務会計業務の潮流を示唆していると、岡本代表は分析しました。

そして、これらの共通点を踏まえて、次世代納税システムが以下のようになると予想されました。弥生PAPカンファレンス2019秋_前編_図2

日本では、申告書作成までは会計事務所に任されていて、申告後から国税庁の仕事が始まるというフローになっています。一方、海外では申告以前から歳入庁が介入するよう変化しつつあります。

これについて岡本代表から、「遠い将来になるかもしれないが、日本も申告書が提出されてから間違いを指摘するのではなく、そもそも申告が誤らないような仕組み作りがされるのではないか。」と、今後の見通しが示されました。

弥生PAPカンファレンス2019秋_前編_岡本代表

OECDが提唱する“Tax Compliance by Design”

 次に、OECDが提唱する、「Tax Compliance by Design」という新たな考え方が紹介されました。弥生PAPカンファレンス2019秋_前編_図3「Tax Compliance by Design」とは、正しい納税義務を果たすための仕組みをDesignしようという考え方です。

Designを実現するためには2通りのアプローチがあり、さきほど紹介された海外の導入事例が、それぞれのアプローチを採用したものであると説明されました。弥生PAPカンファレンス2019秋_前編_図4

  • Secured chain of information
    情報が安全な鎖でつながれている状態。例えば、レジから会計、会計から税務をデジタルでつなぐので間違いが起きない。イギリスの「Making Tax Digital」が典型例。
  • Centralized data
    元データを行政庁が集めているので、申告に誤りがあれば直ちに判明。将来的に、行政庁が申告書を作ることも可能なアプロ―チ。イタリアの「E-invoicing」が典型例。

弥生PAPカンファレンス2019秋_前編

日本版 Tax Compliance by Design の実現

20194月に開催された政府税制調査会の資料に、Tax Compliance by Design導入の兆しが見られます。弥生PAPカンファレンス2019秋_前編_図5

「取引や申告の段階からの正確な手続(誤りの未然防止)を行うことができるような仕組みを構築する。」という記述があり、Tax Compliance by Designが日本でも導入されようとしています。

この流れを受けて、岡本代表は、会計事務所の未来図として、Tax Compliance by Designは究極的に言うと、手入力はせず、すべてデータで処理するため、遠い将来、記帳代行はなくなるかもしれないと指摘しました。

デジタル化で失われるものと、必要になるもの

弥生PAPカンファレンス2019秋_前編

Tax Compliance by Designが導入された後の会計ソフトについて、10年スパンで考えると、将来的になくなる可能性もあるかもしれないと、岡本代表は冷静に分析されました。弥生PAPカンファレンス2019秋_前編_図6

Tax Compliance by Design導入後の会計ソフトは、土管化という言葉のイメージのように、データを左から右へ伝えるためだけの存在になってしまうかもしれない。あるいは、イタリアの事例のように将来的に政府が申告書を作成できる状況になれば、会計ソフトや税務ソフトは要らなくなるかもしれないと、予測されました。

近い将来ではないがこの方向に向かって動き始めているのは事実であり、会計事務所は今後、付加価値が高い業務をキープしていくことが不可欠であると展望を語り、プレゼンテーションを締めくくりました。

相次ぐ法改正に、会計業務の抜本的な改革と、目まぐるしく変わり続ける会計業界。これから会計事務所がどのように対応すべきか考えさせられるプレゼンテーションでした。

後編では、弥生PAP会員事務所による業務改善事例の発表をお届けします!(後編は明日公開予定です!)

会計事務所の生産性はどうすれば向上するのか?:弥生PAPカンファレンス2019秋・東京レポート(後編)

過去の弥生PAPカンファレンスの記事を見る

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弥生会計ロゴ「弥生PAP」とは、弥生株式会社と会計事務所がパートナーシップを組み、弥生製品・サービスを活用して、中小企業、個人事業主、起業家の発展に寄与するパートナープログラムです。2018年9月時点で9,000以上の事務所が加入。税務サービスを提供する会計事務所様はぜひご加入をご検討ください。

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