簡易課税と申告書の記載の問題点:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る_税務署の実態と税務対策ノウハウ

消費税の計算をする場合、売上の消費税から控除できる税額控除額は、原則として実際に支払った消費税額を基礎として計算します。

一方で、小規模事業者に対する特例として、その税額控除額について、売上に課税される消費税に、所定の割合を乗じて概算で計算できるという簡易課税制度が認められています。

簡易課税制度による場合、売上の種類に応じて6段階の控除率(みなし仕入れ率)があり、その売上の種類に応じてそれぞれ決められたみなし仕入れ率をかけて税額控除額を計算することになります。

具体例を申し上げると、
〇 卸売業の売上が2,000万円(消費税は160万)
〇 その他自販機の手数料収入が10万円(消費税は8,000円)

この場合、卸売業のみなし仕入れ率は90%、自販機の手数料のみなし仕入れ率は50%とされていますので、税額控除額は
144万4千円(=160万円×90%+8,000円×50%)
と計算されます。

この簡易課税の計算上、よく問題になるのは、売上の種類ごとに明確な区分をしておかなければならないということです。

上記の例の場合、卸売業の売上と自販機の手数料の売上の両者を同一の売上で計算していた場合、卸売業と自販機の手数料を区分することができず、税額控除額の計算ができません。

この場合、仮にこのような区分がなければ、 最低のみなし仕入れ率で計算するという規定があります。

上記の例の場合、最低のみなし仕入れ率は50%ですから、区分していない場合、税額控除額は
804千円(=(160万円+8,000円)×50%)
と計算されます。

こうなると、大きな税負担になることから、きちんと区分しましょうと言われますが、この区分について現職時代は、帳簿で補助科目を設けるなどして区分していても意味がなく、申告書で明確に区分する必要があると指導されていました。

簡易課税の申告書においては、売上の種類ごとに、金額や全売上に占める割合を記入する欄があり、そこに書いておかなければ最低のみなし仕入れ率で課税していい、と言われていたのです。

ここで問題になるのは、簡易課税の適用上、 75%ルールというものがあることです。

75%ルールとは、二種類以上の売上がある場合、そのうち1種類の売上が全体の75%以上になるのであれば、その75%以上になるみなし仕入れ率で一括で税額控除額を計算できるというものです。

上記の例でいれば、 卸売業の売上割合は
99%(=2,000万円/2,000万円+10万円)
ですので、卸売業のみなし仕入れ率だけで税額控除額を計算することができ、結果として税額控除額は
1,447,200円(=(160万円+8,000円)×90%)
と計算されます。

75%ルールの適用がある場合、いちいち申告書に明記しない税理士もいます。

となると、申告書で区分がないため、最低のみなし仕入れ率で計算するべき、と国税から指導される可能性があります(以下次回)

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著者

元国税調査官・税理士・松嶋洋


元国税調査官・税理士 松嶋 洋

平成14年東京大学卒業後、国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、企業税制研究所(現日本税制研究所)を経て、平成23年9月に独立。

現在は通常の顧問業務の他、税務調査対策等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈をフル回転させるとともに、当局の経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んで解説した、税制改正解説テキスト「超速」シリーズは毎年数百名の税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。

著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』『社長、その領収書は経費で落とせます!』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という200回を超えるコラムを連載中。

<参考サイト>

<著書>

※このコーナーでは元国税調査官・税理士 松嶋洋が税理士法人東京税経センターのメルマガに掲載したコンテンツを編集・再掲したものをお届けしています。今回は、第二百六回目のメルマガ、テーマは「簡易課税と申告書の記載の問題点」です。
引用元: 簡易課税と申告書の記載の問題点| 税理士法人 東京税経センター

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