未だに反対が根強いインボイス制度ですが、「消費税は預り金ではない」という法律の建前だけしか見ない安直な批判があります。
それに止まらず、酒税やたばこ税などの個別消費税との二重課税の問題も持ち出されるようになりました。
この二重課税問題は非常に批判の大きい分野であり、その内容を簡単に言えば、お酒は酒税が課税されているのに、その課税金額に上乗せして消費税を課税するのは、二重に税金をかける行為でけしからん、と言われます。
人情として、この指摘は至極妥当と考えます。この点、税務当局の説明では、
酒税などの個別消費税は「製造者」が納める反面、消費税を実質的に負担するのは「消費者」であるため二重課税ではない、ということです。
納税義務者が違えば二重課税にはならないという理屈であり、この点を踏まえ、「消費者」に当たるゴルフ場の利用者が負担するゴルフ場利用税については、二重課税にならないよう消費税が課される金額から除かれています。
このような説明を聞いても到底納得できませんが、一つ言えるのは、「消費税は預り金ではない」というインボイス反対派の意見を前提とすると、酒税やたばこ税を納める製造者に二重課税が発生しており、消費者は関係ないということになるでしょう。
なぜなら、消費者は納税義務者ではありませんので、税金を負担していないことになるからです。
そうなると、製造業者が二重課税はけしからんと主張することは妥当ですが、一般消費者が二重課税と主張するのは筋違いである、と反対派は国民に説明しなければなりません。
言うまでもなく、酒税も消費税も実質的には消費者に負担が返ってくるため、このような説明はもちろん筋違いです。
やはり、消費税は実質的には消費者からの預り金だからこそ個別消費税との二重課税は問題視されるべきで、法の建前にだけとらわれていては本質を見失ってしまいます。
このため、消費者からの実質的な預り金を適正に納税させるために、インボイスのような客観的な証拠を取引ごとにやりとりさせ、保存させるのが重要です。
そもそも、インボイスは消費税逃れを防止するために必要とされる制度であり、消費税分上乗せして得をしてきた零細の事業者の特権を奪うために導入したものでありません。
中には、インボイスを導入しても税逃れは減らない、という専門家もいますが、不正な輸出取引に代表されるように、決算書をいじくるだけで消費税還付を受けられた改正前と、インボイス制度が導入された現状を比べれば、消費税の税逃れは格段に減るはずです。
何より、「取引ごと」に課される税金なのに、「1年間」の実績で税金を計算することとした、日本の消費税はそもそも大きな問題がありました。
このような制度の不備を補うのがインボイスであることついて、国税や税理士は納税者に説明すべきでしょう。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。