ETC特例とクレジットカード明細:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官が税務調査対策すべてお話しします_元国税調査官・税理士_松嶋洋

本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

インボイス制度はどの納税者に対しても煩雑な処理を要請するものです。

中でもETCについては、金額が小さいのに利用頻度は大きいため、各高速道路会社からインボイスに当たる利用証明書をダウンロードして保存する手間など、事務負担が大きいことが創設前から指摘されていました。

このため、インボイス制度がスタートする直前に、国税庁はETCに関するインボイスの保存要件を大きく要件緩和し、この指摘に対応することとしました。

具体的には、ETCの利用回数が多いなど、利用証明書の取得が困難な事業者が対象になる特例です。

内容として、クレジットカードの利用明細書と、それに併せて高速道路会社ごとに任意の一取引の利用証明書をダウンロードして保存すればインボイスの保存要件を満たすこととされました。

クレジットカードの明細でETCを利用した年月日や支払金額、そして支配先の高速道路会社が分かります。

後は、高速道路会社ごとにどれか1枚利用証明書を見せてもらえば、登録番号なども分かりますので、全部保存しなくてもOKとする、ということなのです。

ところで、クレジットカードの明細を見れば、取引内容は完璧に分かるのに、その明細だけではインボイスの保存には当たらないとされています。

この理由は単純で、クレジットカード明細は、自分にサービスなどを提供する支払先が交付する書類ではなく、そして登録番号なども記載されないからです。

インボイスは国税庁に登録した、課税事業者である事業者の請求書を意味しますので、当然に支払先が交付すべき書類とされています。

こういう訳で、ETC取引について、どれか1枚、利用明細書の保存は必要になるものの、原則としてクレジットカードの明細の保存で問題ないとしたこの特例は、インボイス制度の大原則に違反しており、消費税法違反と評価されるものです。

このような取扱いを税務当局が許すのは、ETC取引の煩雑さというよりも、回数が膨大でかつ一件あたりの金額が小さい取引ですから、税務調査で細かくチェックする気が税務当局にはないからです。

それに加え、高速道路会社は大手企業ですから、ETC取引について不正取引が行われるようなリスクもほとんどないですから、調査する実益も高くありません。

法律上のインボイスに係る義務は厳格ですから、厳密には法律に違反している取扱いとしても、このような要件緩和は望ましいです。

ETC取引に止まらず、取引回数が多くかつ1件当たりの金額の小さい取引はたくさんあり、これらについても税務当局はほとんどチェックしないでしょう。

このため、実益を踏まえてETCと同じような要件緩和が望まれます。

それに止まらず、取引の事実関係はクレジットカード明細で確認できます。

このため、インボイスの建前に関係なく、取引先の登録番号を確認しさえすれば、クレジットカード明細でインボイスの保存に代えられる措置について、税制改正で検討すべきと考えます。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:ETC特例とクレジットカード明細– 経営・会計コンサルティング

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